第273章 北村忠はやはりあの気の強いオンドリ(2)

「何ですって!」鈴木知得留は携帯を持ったまま、爆発しそうになった。

北村忠は声を小さくして、「昨夜、道明寺華と海に遊びに行って、それから島に行ったんだけど、その後どうやって帰ったのか覚えてないんだ。やばい、記憶が途切れてる!すぐに華を探しに行かなきゃ!」

突然、電話が切れた。

電話を切ると、北村忠はベッドから飛び起きるように立ち上がり、身支度もそこそこに適当な服を着て飛び出した。

家では北村雅が朝食を食べていた。

広橋香織はキッチンでパックを顔に貼り、イヤホンをして音楽を聴きながら朝食を作っていた。自分の分の朝食を。

二人とも北村忠が狂ったように家を飛び出すのを見た。

北村雅の表情が一変した。

自分は火星人でも産んだのか?!

いつでもどこでもこんなに「変わってる」なんて!

北村忠は車を運転し、アクセルを踏んで猛スピードで走った。

頭の中は道明寺華が一人で浜辺にいる姿でいっぱいだった。彼女が一人で怖がっていないか、怖くて海に飛び込んで泳いで帰ろうとしていないか、海は深いし、泳いで帰るには遠すぎる、途中で疲れて死んでしまわないか、たとえ疲れなくても、大波に巻き込まれて溺れないか、波がなくても、サメに遭遇したらどうするんだ……

考えれば考えるほど落ち着かなくなった。

北村忠の運転はさらに狂気じみてきた。

車は港区南に到着した。

北村忠は素早くモーターボートを見つけ、それに乗って島へ向かった。

くそっ。

北村忠は完全に苛立っていた。

昨夜どうして道明寺華を置き去りにしたんだ、どうして彼女を置いていったんだ。

くそっ。

昨夜は飲みすぎて、どうやって帰ったのかまったく覚えていない!

彼はものすごいスピードで進んだ。

モーターボートはすぐに浜辺に到着した。

見渡す限りの砂浜に、人影はない。

どこにも人はいない。

北村忠は完全に崩壊しそうだった。

道明寺華は本当に海の中で、死んでしまったのだろうか。

考えれば考えるほど恐ろしくなる。

北村忠は急いで道明寺華の名前を大声で呼んだ。「道明寺華!」

返事はない。

「道明寺華……」

「道明寺華、道明寺華、道明寺華!」

「道明寺華!」

くそっ。

北村忠の目が徐々に赤くなってきた。

くそっくそっくそっ。

昨夜どうして道明寺華を置いていってしまったんだ。