「婚約を破棄する。誰も止められない!」北村忠の大きな声が、豪邸の中に響き渡った。
その瞬間の決意は、誰にも止められないように見えた。
ホールにいる全員が彼女を見つめていた。
北村雅は顔を曇らせ、「忠、黙れ!」
「本当のことを言っているだけだ。俺は最初から冬木心とは何の感情もなかった。お前たちが無理やり結びつけようとしただけだ。今がちょうどいい、お互いに話をはっきりさせて、これからは何の関係もない。もう二度と邪魔しないでくれ!」北村忠は続けて言った。まるで一切の余地を残さないかのように。
「忠!」北村雅は声を抑えながら、余計なことを言うなと制止した。
加藤渚は北村忠の口調から、この話はもう終わったと悟った。
心の中で非常に複雑な思いを抱いた。
息子は斎藤咲子との婚約を解消したばかりで、すでにこんな大きな利権を失った。今度は娘が北村忠と婚約を解消しようとしている。