個室の中。
北村忠は酔っ払って朦朧としていた。
木村文俊は仕方なく、冬木心に電話をかけた。
「文俊」
「心、僕は北村忠と食事をしているんだけど、彼が酔っ払ってしまって」
「どうして北村忠と食事を?彼から誘われたの?」冬木心の口調はあまり良くなかった。
「いや、僕から誘ったんだ」
「あなたが誘ったの?」
「彼の理解に感謝したくて」
「彼が理解してくれなくても良かったのに」冬木心は率直に言った。
木村文俊は笑って言った、「どちらにしても、私たちは正式に認められたんだ」
「うん」向こうで小さく笑い声が聞こえた。
「来られる?北村忠を動かすことができなくて、僕も少し飲んでしまったから、車も運転できないんだ」
「わかった。すぐに迎えに行くわ」
木村文俊は電話を切った。
振り向くと、すでに酔っ払っている北村忠がいた。
テーブルに伏せたまま、呟いている。「華、道明寺華を呼んで...」
道明寺華って誰だ?
北村忠がこんなにも気にかけている人物。
噂になっていたあの女の子?
見た目は明らかに普通で、北村忠の好みのタイプには見えないのに。
彼は個室で座って、冬木心の到着を待った。
約20分後。
冬木心がドアを開けた。
彼女は北村忠を一瞥し、酔いつぶれている様子を見て、顔に嫌悪感を浮かべた。そのまま木村文俊の方へ歩み寄り、「あなた、酔っ払ってない?」
「僕は大丈夫だけど、彼はちょっと...」
冬木心は北村忠の様子を見て、木村文俊の方を向いて言った。「どうして彼と飲む必要があったの?彼らは毎日こんな風に飲んでるのよ。あなたは違うでしょう。何年も海外にいて胃も悪いのに、飲みすぎたら胃に悪いわ」
「わかってる」木村文俊は笑って、彼女の耳元で囁いた。「これっきりだよ。次からは妻の言うことを守って、一滴も飲まないことを誓うよ」
「それなら良いわ」冬木心は微笑んだ。
北村忠は酔っていた。
時々意識が朦朧としていた。
しかし、その時、耳には冬木心と木村文俊の甘い会話がはっきりと聞こえていた。
自分はマゾなのかもしれない。
なぜこんな犬の餌食になるようなことをしているんだ。
なぜ自分の最愛の女性が他の男と愛を語り合うのを、目の前で見なければならないんだ。
自分は病気だ。
突然、彼は勢いよく立ち上がった。