第270章 人を殺す刀を借りる(2)

一行は長い距離を走り続けた。

突然、全員が立ち止まった!

目の前に黒服の男たちが現れ、彼らの行く手を遮った。

そして、後ろからも黒服の男たちが素早く追いつき、完全に包囲された。

一体、彼女一人を殺すために、青木太一は何人もの部下を動員したのか?!

鈴木知得留は目の前の集団を凝視した。

上野和明も警戒を解かず、彼らと対峙していた。

道明寺華は田村厚を拘束しながら、周囲の様子を窺っていた。

前方の黒服の男たちが、一歩一歩と鈴木知得留たちに近づいてきた。

鈴木知得留たちは進退窮まっていた。

鈴木知得留は大声で叫んだ、「これ以上近づくと、田村厚を殺すわよ!本当に殺すわ!」

田村厚は驚愕し、鈴木知得留に向かって叫んだ、「鈴木知得留、私を殺せば法に触れるぞ。死んでも許さない……」

「近づかないで!」鈴木知得留は田村厚の言葉など気にする暇もなく、迫り来る集団を見つめながら言った、「本気よ!」

しかし、目の前の男たちは一向に止まる気配を見せなかった。

鈴木知得留は胸が締め付けられる思いで、厳しい声で言った、「田村厚を殺して!」

「鈴木知得留……」田村厚は恐怖に震えた。この瞬間、鈴木知得留が本気だと悟った!

道明寺華が引き金に指をかけた。

その時。

目の前の黒服の男たちが突然足を止めた。おそらく鈴木知得留が本当に田村厚を殺すつもりなのか、試していたのだろう。

鈴木知得留は道明寺華の腕を引き、手を出さないよう合図した。

今は田村厚を殺すべきときではない。田村厚を殺せば、彼らも確実に死ぬことになる!

田村厚と運命を共にする価値なんてない。田村厚にはその価値がない!

黒服の首領が少し離れた場所に立ち、冷たい声で言った、「彼を殺せばお前も生きては帰れない!」

「殺さなくても生きては帰れないでしょう!でも、私が彼を殺せば、私と田村厚だけでなく、あなたたちも道連れよ!」

「お前!」首領は彼女の言葉に顔を歪めて怒りを露わにした。

鈴木知得留は言った、「私たちを行かせて!」

黒服の男たちは動かずにいた!

鈴木知得留はさらに声を張り上げ、威圧的な態度で言った、「私たちを行かせて!」

「行かせてやってもいい。人質を交換しよう!」黒服の首領が突然譲歩した。