第293章 もう家族を守り切れない!(2話、特典あり)

車内。

冬木空は振り向かなかった。

上野和明は助手席に座っていた。

二人が半秒の沈黙の後、冬木空は突然車から小型の監視カメラを取り出した。

上野和明は顔色を変えた。

冬木空は言った、「お前のだろう!」

上野和明は冬木空を睨みつけた。

彼が知っているとは。

華から北村忠の携帯のケースに仕掛けたと聞いていたが、こんなに早く見つかるはずはないと思っていた。

「持って帰れ」冬木空は言った、「俺はお前らが思っている以上の能力がある。だから監視しようとするな。監視できると思うなよ」

上野和明は小型カメラを手の中で握りしめた。

確かに。

以前は冬木空の腕が立つことしか知らなかったが、こんなに深く隠していたとは。

青木太一を追い詰めることができるなんて。もし彼がいなければ、今頃青木太一は死体になっていただろう。

驚かざるを得なかった!

「今日は鈴木知得留がいなければ、お前は確実に死んでいた」冬木空は本題に戻った。

上野和明は彼を見つめた。

「俺は自分に関係のない人間のために、武器を下ろすことはない」冬木空は率直に告げた。鈴木知得留がいなければ、確実に死んでいただろう。「だが今お前は生きている。鈴木知得留が命を賭けて脅したからだ。そして俺は、鈴木知得留が何かに遭遇した時、お前も同じように彼女に接することを望む」

「言われなくてもわかっている!」上野和明は強く言い返した。

「そうであることを願う」冬木空は車のドアを開けた。「早く帰れ」

彼は去っていった。

上野和明は冬木空の背中を見つめ、表情は険しかった。

彼は常々感じていた。冬木空は多くのことを知っている。彼らが知らないと思っている多くのことを。

……

冬木空はエレベーターに乗り、広大な自宅に戻った。

彼はソファに座り、二階には上がらず、タバコを吸っていた。

一本また一本と。

鈴木知得留は風呂を済ませ、二階で長い間待っていたが冬木空が戻って来なかったので、下りて様子を見に行った。

彼がソファに座り、彫刻のように動かずにいるのを見た。

鈴木知得留は黙って彼を見つめ、感情を整理する時間が必要なのだろうと思った。

だから邪魔はしなかった。

彼女は二階に戻ろうとした。

「奥様」冬木空が呼んだ。

甘い響きはなく、ただ呼びかけただけの平坦な声だった。