車内。
冬木空は振り向かなかった。
上野和明は助手席に座っていた。
二人が半秒の沈黙の後、冬木空は突然車から小型の監視カメラを取り出した。
上野和明は顔色を変えた。
冬木空は言った、「お前のだろう!」
上野和明は冬木空を睨みつけた。
彼が知っているとは。
華から北村忠の携帯のケースに仕掛けたと聞いていたが、こんなに早く見つかるはずはないと思っていた。
「持って帰れ」冬木空は言った、「俺はお前らが思っている以上の能力がある。だから監視しようとするな。監視できると思うなよ」
上野和明は小型カメラを手の中で握りしめた。
確かに。
以前は冬木空の腕が立つことしか知らなかったが、こんなに深く隠していたとは。
青木太一を追い詰めることができるなんて。もし彼がいなければ、今頃青木太一は死体になっていただろう。