第307章 彼に会う度、最初の一目で胸が高鳴る

冬木空が何を考えているのか、冬木郷には本当に分からなかった。

幼い頃からずっと分からなかった。

ただ分かっているのは、兄が凄く優秀だということだけだ。

そして彼は兄の言うことに従うしかなかった。

兄が冬木家の事業を継げと言えば継ぎ、継ぐなと言えば身を引く。

それは彼にはよく分かっていた。

そして長い間、兄の監視の下で出勤し、毎日兄の顔色を伺いながら行動していた。

兄と父の会話も聞いていた。

父は明らかにこの家業を彼に譲りたくなかったが、兄は父に対して、冬木グループには興味がないとはっきりと伝えていた。

多くの場合、父は兄に手こずっていた。

冬木郷は時々考えていた。

彼の家族も多くの名門家庭の悪い面を持っていた。例えば家長の絶対的な権威は侵すことができないこと、家庭環境の厳格さ、外見の華やかさ、少し異常なまでの自己修養など、たくさんあった。しかし彼らの家族は、おそらく唯一、そこまでの駆け引きがなく、財産を巡って血で血を洗うような争いもなかった。