第320章 胸が痛い、ますます痛くなる(3更)

道明寺華は冬木心を背負って走り、足取りは軽やかだった。

警備員は道明寺華の様子を見て完全に驚いていた。

この人は罪を逃れようとして、被害者まで連れ去ったのか?!

数秒間呆然とした後、数人の警備員は急いで追いかけ、警察に通報した。

道明寺華のスピードはとても速かった。

冬木心は道明寺華の背中で、痛みのあまり言葉も出なかった。

今日ショッピングモールでファッションショーがあり、午後2時から始まる。今は衣装の準備をしなければならず、彼女がデザインした服に問題が生じたため対処する必要があった。そのため急いでいて、ホテルの玄関に停まっていた車が突然動き出したことに気付かず、次の瞬間には地面に倒れていた。

彼女は朦朧とする中で、自分を轢いた人が道明寺華だと分かり、今も道明寺華が自分を背負って速く走っていることを認識していた。

病院に到着すると、道明寺華は直接救急科に向かい、冬木心を救急室に運び込んだ。

道明寺華の額には汗が滲んでいた。

警備員たちは追いかけてきて、道明寺華が患者を救急室に運び込むのを見て、荒い息を吐いていた。

この女性は何を食べて育ったのか、こんなに走れるなんて。

人を背負いながらでもこんなに速く走れるなんて、もう少しで見失うところだった。

そして今、病院に運び込まれたのを見て、ほっと胸を撫で下ろした。

道明寺華は救急室のドアを見つめながら、考えた末に北村忠に電話をかけた。「北村忠、私が人を轢いてしまった。」

「何だって?」北村忠はその瞬間、オフィスチェアから飛び上がった。

「冬木心を轢いてしまったの。」

「なんだって?!」北村忠はその瞬間、爆発しそうになった。

今、道明寺華は誰を轢いたと言った?!

「今、彼女を病院に連れてきて、救急室にいる。」

「どこの病院だ。」

「住所を送る。」道明寺華は電話を切った。

彼女は位置情報を使って、北村忠に住所を送信した。

メッセージを送り終えた瞬間、彼女は突然呆然とした。

最初に鈴木知得留のことを思い出さなかったのに、この瞬間突然北村忠のことを思い出した。

彼女は暫く黙り込んで、鈴木知得留に電話をかけようとしたが、今日彼女には重要な用事があることを思い出し、歯を食いしばって電話を置いた。

その時、警察がすでに到着していた。