第337章 酒を飲んで偶然の出会い

北村忠と村上紀文は、この半年の間、時々一緒に飲みに行くようになった。

多くを語ることもなく、ただひたすら酒を飲む。

二人ともかなり暇そうだった。

とにかく時間はたっぷりあった。

北村忠はグラスの酒を一気に飲み干し、「村上、これからどうするつもりだ?」と尋ねた。

村上紀文は北村より上品に飲んでいたが、実際には北村と同じくらいの量を飲んでいた。

「その日暮らしさ」と彼は答えた。

「こんなに長い間、まだ斎藤咲子とこのままでいるつもりか?」

「違う」村上紀文は即答した。「俺と斎藤咲子の間には何もない」

「何もないのに、なぜ斎藤グループに残っているんだ?」

「自分がどこに行けばいいのか、まだ分からないからだ」村上紀文は酒を飲みながら答えた。

「認めたくないだろうが、やっぱり斎藤咲子のためだろう」北村忠は確信を持って言った。

村上紀文はもう説明する気も失せた。

酔っ払った人間に説明しても無駄だ。

それに、自分も酔っていた。

彼と北村忠は、週に二日ほど一緒に飲んでいた。

特に話題もなく、ただ飲むだけ。

北村忠はかなり長い間落ち込んでいて、理由を聞いても話さなかったが、おそらく冬木心のことだろう。

そして噂によると、冬木心が結婚するらしい。

記者の作り話なのか事実なのかは分からないが、北村忠にとって、冬木心のちょっとした動きでも一日の気分を左右するのだ。

村上紀文は、北村忠が今夜酒を飲みに来たのも、今日の冬木心のニュースが原因だろうと推測した。

村上紀文はその時、ふと笑みを浮かべた。

自分も暇すぎて、誰のゴシップでも見て、誰の噂でも知っているところまで来てしまったのだ。

彼はグラスを置いて、立ち上がった。

北村忠は酒に酔って上機嫌の時、村上紀文を引き止めて、「どこに行くんだ、まだ早すぎる!」

「心配するな、トイレに行くだけだ」

「なぜ個室で済ませないんだ」

「お前のために空けておくさ」と村上紀文は率直に答えた。

北村忠は村上紀文を見つめ、分かってくれているという表情で、軽く彼の胸を叩いた。「いい友達だ」

村上紀文は軽く笑った。

北村忠とは、純粋に酒飲み仲間だった。

せいぜい境遇が少し似ているくらいで。

でもお互いにあまり心を開くことはなかった。

村上紀文は個室を出た。

酔いで少しふらついていた。