第350章 矛盾の激化(2)斎藤咲子の主動的な接近

結局。

斎藤咲子は背を向けて立ち去った。

村上紀文に対して、そこまでの思いやりはなかった。

翌日の午前中、村上紀文は定刻通りに出勤した。

彼がオフィスに現れた時、黒いスーツを着て、背が高くすらりとしていて、つい最近手術を終えて病院から直接来たとは全く見えなかった。

村上紀文はゆっくりと自分の椅子に座った。腹部の傷は順調に回復していたが、10日ほどで完治するわけがない。

だから慎重に動かなければならなかった。

彼が座ったばかりの時。

その瞬間、服が少し窮屈に感じた。

スーツもワイシャツもオーダーメイドで、大きすぎても小さすぎてもいけない。着た時に見栄えが悪くなるからだ。しかも彼らのような立場の人間は、服装にうるさく、仕事や公式の場では常にスーツをきちんと着こなし、品格を保っている。