第343章 病院で仕事、対立が激化

病室の中。

斎藤咲子の手のひらが、突然、村上紀文にしっかりと握られた。

しっかりと、というよりも、彼の手のひらの中に彼女の小さな手が包まれただけだった。

実際のところ。

彼には力が入っていなかった。

今の彼には、斎藤咲子の手をしっかりと掴むような力など、まったくなかった。

だからその瞬間。

斎藤咲子は簡単に、痕跡も残さずに手を振り払った。

村上紀文の瞳が僅かに揺れた。

自分でも、どこからそんな勇気が出て、彼女の手を取ったのか分からなかった。

彼女が拒否することは予想していた。

むしろ嫌悪感を示すかもしれないとも。

そうなることは分かっていたのに、それでも手を伸ばしてしまった。

今、極度の眠気に襲われている頭の中で、斎藤咲子が言った二つの「ここ」という言葉が繰り返し響いていた。