第344章 冬木空が退院(2更)

村上紀文は彼女を見つめていた。

斎藤咲子の顔に浮かぶ皮肉な表情を見つめていた。

斎藤グループの機密文書が全部この中に入っているのに、なんて馬鹿なんだろう、村上紀文にパソコンを渡すなんて。

もしかしたら、村上紀文と母親が仕組んだ芝居だったのかもしれない。

わざと彼女にこんな重要なものを村上紀文に渡させて、母子で彼女を陥れようとしているのかもしれない。

村上紀文も斎藤咲子の考えを推し量るのをやめたようだった。

心の中ではすでに察していたけれど。

何も言わなかった、何を言えばいいのかもわからなかった。

北村忠は斎藤咲子がまだ彼のことを好きかもしれない、まだ気にかけているかもしれないと言った。

彼は思った...そんな可能性はほとんどゼロだと。

斎藤咲子は彼を憎んでいるだけだ。