第360章 沈黙の爆発(2)村上紀文にそんなに無関心なの!

食堂にて。

道明寺華はチキンスープを飲んでいた。

彼女は肉料理を食べたことがなく、初めて口にして、まるで新大陸を発見したかのようだった。

機会があれば、師匠や師兄弟たちに、肉は実においしくて、苦くないということを伝えたいと思った。

彼女は美味しそうに食べていた。

斎藤咲子は数口しか食べず、明らかに食事を楽しめていなかった。

鈴木知得留も彼女に無理に食べるよう強要はしなかった。

結局、みな大人なのだから、自分の体調は自分で管理できるはずだ。

「村上紀文に会いに行かなかったの?」と鈴木知得留は尋ねた。

「行ってません」と斎藤咲子は率直に答えた。

たとえニュースで九死に一生を得たと報じられていても。

「根岸峰尾はどう?」と鈴木知得留は話題を変えた。

斎藤咲子が村上紀文の話題になると、明らかに拒絶反応を示すからだ。

時々、鈴木知得留は考える。彼女は村上紀文という人物を拒絶しているのか、それとも自分の心を拒絶しているのか。

「幸い目を覚ましました」と斎藤咲子は言い、その時少し微笑んだ。

誰の話をする時も笑顔になれるのに、村上紀文の話題だけは一切笑顔を見せない。

「根岸峰尾の容態は安定していて、両親が東京の生活に慣れなかったので、医師の許可を得て故郷に連れて帰りました。上野和明が全行程付き添って送っていきました」

帰る時、斎藤咲子は根岸峰尾の口座に大金を振り込んだ。浪費してもなお一生暮らせるほどの額だった。

「これからもボディーガードは必要?和明に新しい人を探してもらえるけど」

「結構です」と斎藤咲子は断った。「今では思うんです。ボディーガードがいても本当に安全が保証されるのかって。今回の事故で私は大きな苦しみを味わい、さらに根岸峰尾まで巻き込んでしまった。根岸峰尾が植物人間になるかもしれないと思った時の罪悪感、両親が病床で号泣する姿を見た時、命で償いたいと思うほどでした」

鈴木知得留は喉が詰まる思いだった。

斎藤咲子はそういう人だ。善悪をはっきりと区別する。

こんなに素晴らしい女性が、このような家庭に生まれなければ、人生はもっと輝いていたはずだ。