第359章 私は妊娠しました(2更)

「どうしてここに?」二人はお互いを見つめ合った。

そして。

斎藤咲子は突然笑って、「ここはあなたの家ね」と言った。

道明寺華は頷いた。

斎藤咲子は近寄って、道明寺華の隣に座った。彼女は顔色が悪かったが、この時道明寺華に向かって優しく微笑んだ。「今夜お邪魔させてね」

「うん」道明寺華は頷いた。

「知得留から出て行ったって聞いたけど、どうして戻ってきたの?」斎藤咲子は尋ねた。

道明寺華は少し黙っていた。

斎藤咲子は、道明寺華が話したくないのだろうと思った。

それ以上は聞かなかった。

実際、彼女も詮索好きな人間ではなかった。

彼女は立ち上がって、道明寺華の客室に向かおうとした。

立ち上がった瞬間。

「私、妊娠したの」道明寺華が突然口を開いた。

斎藤咲子は凍りついた。

その瞬間、聞き間違えたのかと思った。

彼女は振り返って道明寺華を見た。

彼女はまだゆったりとしたTシャツを着て、ソファに足を組んで座っていた。Tシャツはお腹を隠していて、体も太っていなかったので、一目見ただけでは全くわからなかったし、よく見ても気付けなかった。

斎藤咲子は数秒間呆然としていた。「妊娠したって?」

「医者に6ヶ月だって言われた」道明寺華は率直に答えた。

斎藤咲子は情報量が多すぎると感じた。

まず第一に。

道明寺華は尼僧で、出家した人はそういうことをしてはいけないはずでは?

第二に。

道明寺華は6ヶ月前に妊娠したと言っている。計算すると東京を離れた直後に妊娠したことになる。そして子供の父親は誰?

彼女は道明寺華を注意深く見つめた。

道明寺華は人の心を読むのが得意ではなく、こう言った。「その時、病院で胃の検査をしたら、医者に胃がんだと言われたの」

「えっ?!」斎藤咲子は少し興奮した。

「でも実は検査結果を間違えられていたの。私はその時見なかったし、医者も私の検査結果じゃないって気付かなかった。本当は表層性胃炎で、大したことなくて、食事に気を付ければよかっただけ。でも胃がんだと思い込んで東京を離れて、携帯番号も変えちゃった。病院が間違いに気付いた時には連絡が取れなくて、だから私は死なないでいいってことを知らなかったの」

それで……

その間に何かあったということ?

「死ぬ前だと思って、死ぬ前に北村忠を襲ったの」

斎藤咲子は目を丸くした。