斎藤咲子はまっすぐに目の前の男を見つめていた。そして、彼が突然倒れるのを見た。
全身が血まみれだった。
その男だけでなく、村上紀文も全身血まみれだった。
顔も、服も、血で染まっていた。
彼の手には、その男が脇に置いていた刀があった。
刀も血まみれだった。
今も血が一滴一滴と滴り落ちていた。
そして彼の手、村上紀文の手が、制御できないほど震えていた。
二人は見つめ合った。
村上紀文は突然刀を脇に投げ捨てた。
手が止まらないほど震えているのに、表情には何の感情も見えなかった。
彼は斎藤咲子の上に倒れていた男を力強く押しのけた。
「大丈夫だ、大丈夫だ...」と彼は言った。
斎藤咲子は彼を見つめた。
彼の落ち着いた声が、彼女を慰めているようだった。
彼女は村上紀文が近づいてくるのを見た。
血まみれの両手を彼女に伸ばしながら。
村上紀文は本当に彼女をしっかりと抱きしめたかった。慰めたかった。もう怖がらせたくなかった。
彼はそれほどまでに彼女を守りたかった。
今、紙のように真っ青な顔をした女性に近づきたかった。
しかし彼の指が触れようとした瞬間。
斎藤咲子は突然「触らないで!」と叫んだ。
村上紀文の手が凍りついた。
すでにひどく震えていたのに、彼女の一言で宙に固まってしまった。
「触らないで!」斎藤咲子は叫んだ。
彼女の目は赤く潤んでいた。
まるで恐怖から我に返ったかのように、突然村上紀文を激しく拒絶し始めた。
村上紀文の喉が動いた。
その瞬間、飲み込んだものは一口一口が血のように感じられた。
彼は彼女を見つめた。黙って見つめた。
彼女がベッドから這い降りるのを、全身を震わせているのを見た。それは単なる恐怖だけではなかった...
薬が効き始めていた。
完全に効き始めていた。
彼女の視界はぼやけ、体全体が自分のものではないように感じられ、言い表せないような衝動さえ感じていた。
実は。
彼女は早くからそれが何なのか察していた。
あの男が飲ませた時から、すでに分かっていた。
分からなかったのは、この薬が彼女をこれほど苦しめるということだった。