第357章 矛盾の激化(9)冬木郷のところへ送ってもいいか?(2)

斎藤咲子はまっすぐに目の前の男を見つめていた。そして、彼が突然倒れるのを見た。

全身が血まみれだった。

その男だけでなく、村上紀文も全身血まみれだった。

顔も、服も、血で染まっていた。

彼の手には、その男が脇に置いていた刀があった。

刀も血まみれだった。

今も血が一滴一滴と滴り落ちていた。

そして彼の手、村上紀文の手が、制御できないほど震えていた。

二人は見つめ合った。

村上紀文は突然刀を脇に投げ捨てた。

手が止まらないほど震えているのに、表情には何の感情も見えなかった。

彼は斎藤咲子の上に倒れていた男を力強く押しのけた。

「大丈夫だ、大丈夫だ...」と彼は言った。

斎藤咲子は彼を見つめた。

彼の落ち着いた声が、彼女を慰めているようだった。

彼女は村上紀文が近づいてくるのを見た。