第357章 矛盾の激化(9)冬木郷のところへ送ってもいいか?(2)

斎藤咲子はまっすぐに目の前の男を見つめていた。そして、彼が突然倒れるのを見た。

全身が血まみれだった。

その男だけでなく、村上紀文も全身血まみれだった。

顔も、服も、血で染まっていた。

彼の手には、その男が脇に置いていた刀があった。

刀も血まみれだった。

今も血が一滴一滴と滴り落ちていた。

そして彼の手、村上紀文の手が、制御できないほど震えていた。

二人は見つめ合った。

村上紀文は突然刀を脇に投げ捨てた。

手が止まらないほど震えているのに、表情には何の感情も見えなかった。

彼は斎藤咲子の上に倒れていた男を力強く押しのけた。

「大丈夫だ、大丈夫だ...」と彼は言った。

斎藤咲子は彼を見つめた。

彼の落ち着いた声が、彼女を慰めているようだった。

彼女は村上紀文が近づいてくるのを見た。

血まみれの両手を彼女に伸ばしながら。

村上紀文は本当に彼女をしっかりと抱きしめたかった。慰めたかった。もう怖がらせたくなかった。

彼はそれほどまでに彼女を守りたかった。

今、紙のように真っ青な顔をした女性に近づきたかった。

しかし彼の指が触れようとした瞬間。

斎藤咲子は突然「触らないで!」と叫んだ。

村上紀文の手が凍りついた。

すでにひどく震えていたのに、彼女の一言で宙に固まってしまった。

「触らないで!」斎藤咲子は叫んだ。

彼女の目は赤く潤んでいた。

まるで恐怖から我に返ったかのように、突然村上紀文を激しく拒絶し始めた。

村上紀文の喉が動いた。

その瞬間、飲み込んだものは一口一口が血のように感じられた。

彼は彼女を見つめた。黙って見つめた。

彼女がベッドから這い降りるのを、全身を震わせているのを見た。それは単なる恐怖だけではなかった...

薬が効き始めていた。

完全に効き始めていた。

彼女の視界はぼやけ、体全体が自分のものではないように感じられ、言い表せないような衝動さえ感じていた。

実は。

彼女は早くからそれが何なのか察していた。

あの男が飲ませた時から、すでに分かっていた。

分からなかったのは、この薬が彼女をこれほど苦しめるということだった。