北村忠は急いで車を走らせ、狂ったように冬木心のマンションへと向かった。
路上駐車が可能かどうかなど気にもせず、アクセルを踏んで急停車し、車のドアを開けて中へ駆け込んだ。
彼は激しく冬木心の部屋のインターホンを押し続けた。
部屋の中からは何の反応もない。
すぐに電話を取り出して掛けるが、電源が切られたままだった。
彼は歯を食いしばった。
先ほど彼に電話をかけてきた相手にかけ直すが、そちらも電源が切られていた。
北村忠の表情は険しかった。
彼は突然、壁を強く殴りつけた。大きな音が響き、手の甲が真っ赤に腫れ上がった。
一体誰だ?!
一体誰が冬木心を誘拐したんだ?
こんな時に、こんな重要な時期に。
彼は歯を食いしばった。
警察に通報すべきか?
もし通報して...人質が殺されたらどうする?