北村忠は北村系を離れた。
井上明にこのように皮肉られた後、彼は初めて反論せず、衝動的にならず、そのまま立ち去った。
挫折感は強かったが、これが事実だった。
良い手札を持っていたのに、台無しにしてしまった。
彼は病院に戻った。
病室で、道明寺華は息子に授乳を終えて戻ってきたところで、ベッドに横たわったばかりの時に北村忠が戻ってくるのを見た。元気のない様子で、すぐに付き添いベッドに横たわり、一言も発せずに布団にくるまって寝てしまった。
道明寺華も静かにしていて、昨夜何があったのか、なぜ一晩帰ってこなかったのかを聞かなかった。
彼女にとって、自分の生活を送ればそれでよく、他人の生活に干渉しようとは思わなかった。
そんな静かな病室に。
広橋香織が現れた。
彼女は振り向いて、ベッドで携帯を見ている道明寺華を見た。
眉をしかめて、すぐに近寄り、「華、携帯をあまり見すぎないで、目に良くないわ、控えめにね」
道明寺華は素直に頷いた。
広橋香織は蛹のように布団にくるまった北村忠を見た。
どこからともなく怒りが込み上げてきた!
今朝のホットニュースを見て、本当に北村忠を殺してやりたいと思った。
余計なことをして、今では厄介なことになってしまった。
木村文俊は北村忠と冬木心が関係を持っていると断言し、さらに北村忠が彼に意地悪な報復をしたと言い、今では全国民が北村忠と冬木心をクズカップルだと思い、呪詛し非難している。
彼女には理解できなかった。なぜ一人の冬木心のために北村忠がここまで惨めな状況に追い込まれなければならないのか!
以前は冬木心に対してそれほど大きな不満はなかった。北村忠の心を深く傷つけたとしても、結局は北村忠の一方的な思い込みだったし、好きでないならそれまでで、冬木心に過ちはなかった。しかし今では、本当に冬木心という人物に不満を感じ始めていた。拍手には両手が必要なはずだ!
彼女は近づいて、一気に北村忠の布団を引っ張った。
北村忠は必死に布団を掴んでいた。
広橋香織は力強く引き剥がした。
北村忠は体を丸めた。
広橋香織は不機嫌な表情で、「逃げても何の意味があるの?!困難に直面するとこうなの、あなた本当に男なの!」
「僕は自分が失敗者だと思います」
「今更気付くなんて、本当に馬鹿ね」