冬木空は突然立ち上がり、厳かな法廷で、一言一言はっきりと言った。「私には、この事件の真犯人が鈴木知得留ではなく……という有力な証拠があります」
全員が冬木空を見つめていた。
青木晴人、金田貫一。
冬木郷、斎藤咲子。
楠木観月、秋山静香。
楠木天理、秋山文雄。
その場にいる全員が、彼をそのように見つめていた。
明らかに。
青木晴人の全身が緊張し始めた。
冬木空について、この男について、いつも、動かなければ動かないが、一度動けば人々を驚かせるようだった。
彼は深く息を吸った。
必死に自分の感情を抑えようとしていた。
彼もなぜ冬木空がこれほどまでに人に圧力を与えることができるのか分からなかった。
認めたくはないが、心の奥底では羨ましかった。いつになったら、いつになったら自分も彼のような存在感を持てるのだろうか。わざと自分の存在をアピールするのではなく、彼が一言話すだけで、その場の焦点に、全員の注目の的になれる、そんな魅力で全ての人を引き付けることができる、そんな存在感を。
このように緊張感のある法廷。
君島博の表情も緊張していた。
冬木空について、以前はそれほど気にも留めていなかった、ただ君島御門が取り込もうとしているのを故意に妨害しただけだったこの男について、今、今実際にこの男と接してみると、認めざるを得なかった。冬木空の能力は彼の想像をはるかに超えていた!
彼は目を凝らした。
その瞬間、冬木空の言葉を聞いた。
わざと2秒間の間を置いた後、「真犯人は、楠木観月です!」と言った。
二文字。
青木晴人と金田貫一の二人は思わず安堵の息をついた。
その瞬間、本当に冬木空が彼らの誰かの名前を言い出すのではないかと恐れていた。
思わず、背中から冷や汗が出始めた。
法廷全体がまだ衝撃を受けていたその一瞬、楠木観月が突然傍聴席から立ち上がった。「冬木空、何を言い出すの!あなたに何の証拠があるというの?!」
冬木空は楠木観月を全く見向きもしなかった。
裁判長に向かって言った。「裁判長、私が法廷に上がり、証拠を提示することをお許しください」
裁判長はその瞬間、明らかに横の君島博を見た。
君島博が軽く頷いた。
裁判長はようやく「許可する」と言った。
冬木空は法廷の中央に現れた。
冬木空は鈴木知得留を見つめた。