第431章 北村忠の頭角を現し、井上明が激怒（3更）

静かなオフィス。

冬木心の一言で、突然静かになった。

北村忠は冬木心を見つめていた。

冬木心は言い終わってから、自分が少し...言い過ぎたかもしれないと感じた。

彼女は言った。「あなたがこんなに真面目な様子なんて慣れないわ。以前はいい加減な話ばかりだったのに、急にこんなに頼もしくなるなんて違和感があるわ。」

彼女は場を和ませようと、なんとか取り繕おうとした。

彼女は北村忠の感情を壊すつもりはなく、ずっと我慢してきた。

いつかは忘れられるかもしれない、木村文俊を忘れたように。

北村忠も笑いながら冗談めかして言った。「数年前からこうだったら、もしかしたらあなたを振り向かせることができたかもしれない。」

冬木心は答えなかった。

北村忠も自分が馬鹿なことを言っているのを分かっていた。

何百年前からこうだったとしても、冬木心は彼に目もくれなかっただろう。

冬木心は本題に戻った。「さっきの要求は、できる限り頑張ってみるわ。」

「ありがとう。これが契約書だけど、金額が少なすぎないか確認してくれる？」

冬木心はちらりと見た。

金額は彼女の現在の相場の2倍以上だった。

彼女は言った。「わざわざ友達価格にしなくていいわ。」

「いや、木村文俊の契約書を見たんだ。どう考えても、あなたは彼の倍以上もらうべきだよ！あんなクズでもこんな高額なデザイン料がもらえるなら、あなたは完全に彼を打ち負かすべきだ！」

冬木心は思わず笑った。

真面目な中にも、北村忠のおどけた性格は隠しきれなかった。

彼女は言った。「そんなに認めてくれてありがとう。」

「事実だからね。」北村忠は言いながら、先に手を差し出した。「よろしくお願いします。」

冬木心は北村忠を見つめた。

北村忠が単なる協力者として彼女と向かい合って座り、彼の目から熱い光が消えかけているのを見て、こんなに落ち着いて自然に彼女と接している様子を見て、彼女の心は少し揺れた。彼女はそれを悟られないように隠しながら、「よろしくお願いします。」と言った。

お互いの手が固く握り合った。

次の瞬間、北村忠は彼女の手を離した。

彼女よりも早く離れた。

もう未練はないかのように。

しかし彼女の指先には、まだ彼の温もりが残っているようで、消えることはなかった。