第432章 陰険狡猾、放送直前（1）

北村英は意地の悪い笑みを浮かべながら言った。「木村文俊が、方法があると言っているわ」

井上明は木村文俊が事態を収拾できるとは信じていないようだった。井上明は常々他人を見下げる傾向があり、北村系に入って以来、北村雅に対する敬意以外は、他の誰に対しても軽蔑的な態度を取っていた。特に木村文俊のような人物に対しては、まったく眼中にないといった様子だった。

北村英も息子の感情を察することができ、不愉快そうな表情で言った。「底辺から這い上がってきた人たちを侮るものではないわ。彼らの思惑は、あなたが想像する以上に狡猾なものよ」

「どうなるか、見物だな」井上明は皮肉を込めて言った。

北村英は息子にこれ以上説明する気はなく、「木村文俊に便宜を図りなさい。結果を見ていればいいわ」と言った。

「わかった」井上明はすぐに承諾した。

誰かが無償で仕事をしてくれるのなら、断る理由はないだろう。

ただ、期待はしていなかった。

それに、北村忠が何か大したことをできるとは本当に思えなかった。一時的な見せかけに過ぎず、恐れるに足りないと考えていた。

北村英も息子とこれ以上話す気はなかった。

彼女は直ちに立ち去った。

木村文俊という男は彼女の側で過ごした時間は長くも短くもないが、少なくともこの期間は本当に彼女の気に入るように振る舞っていた。愛人としての役割を完璧にこなし、彼女に従順で、甘えることもでき、ベッドでも暖かく、さらに狡猾で策略に長けていた。

彼女は息子の井上明のことをよく理解していた。常に自分の考えを正しいと思い込み、自分が認めない人は何もできないと決めつけ、少し傲慢すぎる。これは必ずしも良いことではない。一方、木村文俊という男は全く異なっていた。彼は最底辺から這い上がってきた人間で、誰も見下げることはない。脅威と感じた相手なら、誰であれあらゆる手段を使って陥れようとする。この点が、彼女は非常に気に入っていた。

北村系ビルを出て、北村英は赤いフェラーリを運転しながら言った。「今、井上明に話をつけてきたわ。何か井上明の助けが必要なことがあれば、直接言って」

「英、僕に優しすぎるよ」向こうから木村文俊の興奮した甘い声が聞こえてきた。

「あなたは私の可愛い人よ。あなたに優しくしないで誰に優しくするの」北村英は笑って言った。