「そうだ、そうだ、私はバカだ。バカだからこそ、こんなに長い間禁欲生活を送りながらも、あなたを狂おしいほど愛してしまうんだ!」北村雅は激しく言い放った。その瞬間、彼も少し取り乱して、開き直ったような態度を見せた。
広橋香織は彼を見つめ、その瞬間、口まで出かかった言葉を飲み込んだ。
北村雅も彼女を見つめ返し、この瞬間、まるで彼女の答えを求めているかのようだった。
彼は自分に言い聞かせた。後退りも恐れもしないと。どうせ、どうせ広橋香織がどんな答えを出そうと、彼はこの人生を賭けると決めていたのだから。
そうして突然静かになった二人。
広橋香織はゆっくりと口を開いた。「林夢がしたことを早く私に話してくれていれば、私たちはこんな風にはならなかったはずよ。」
北村雅は一瞬固まった。
彼は広橋香織のこの言葉の意味を考えていた。
きちんと説明しなかったことを責めているのだろうか?
なぜもっと早く彼女を探しに来なかったことを責めているのだろうか?!
彼はそのまま広橋香織を見つめ、一言も発することができなかった。
広橋香織も北村雅が答えるとは思っていないようだった。
彼女は言った。「帰りましょう。」
帰りましょう。
この人生も、もう半分以上過ぎてしまった。
北村雅はその場に立ち尽くし、動かなかった。
「帰るって言ったでしょう。もう遅いわ。」普段なら、彼女はもうベッドに横たわっている時間だった。
北村雅はまだ動かず、ただ広橋香織を見つめ、まばたきもしなかった。
広橋香織は少しイライラし始めた。
さっきまで北村雅の言葉に少し心を動かされていたのに、今度は彼に知的障害があるんじゃないかと思い始めた。二人はどうも同じ波長で考えることができないようだった。
北村雅は言った。「広橋香織、私のことが好きですか?」
広橋香織は固まった。
彼がこんな言葉を突然言い出すとは思わなかった。
「私のことが好きですか?」北村雅は突然執着的になった。
かつて二人が避けてきた言葉が、この瞬間、すべてテーブルの上に並べられた。
北村雅の迫るような態度に対して、広橋香織は淡々と答えた。「この年になって、好きだの好きじゃないだのって。残りの人生を静かに過ごしましょう。」
「私は年を取っていない。」北村雅は広橋香織に確信を持って告げた。