第442章 北村忠、あなたは冬木心と一緒に出張するの?(2番目)

北村邸の大広間。

北村忠が言い終わると。

大広間は数秒間静まり返った。

次の瞬間、「忠!」

耳をつんざくような声が響いた。

北村雅は慌てて妻のお腹を撫でた。

興奮しないで。

そんなに興奮しないで。

「何で海外に行くの?!こんな大事な時期に何で海外なんて!」広橋香織は体を震わせながら怒った。

北村忠は冷静に答えた。「アリス審査団を招いて、冬木心と木村文俊の件を公平に審査してもらうために……」

「また冬木心か、お前は一生彼女のことから抜け出せないのか!」広橋香織は激怒した。

北村雅はずっと黙って妻のお腹に向かって言い続けた。「娘よ、おとなしく寝てなさい、おとなしく寝てなさい……」

「母さん、冬木心が木村文俊にこんな風に中傷されたのは僕のせいでもあるんです。僕は自分の責任を果たしているだけで、母さんが考えているようなことは何もありません」北村忠は説明した。高齢妊婦の母をあまり怒らせないように気を付けながら。

「あなたに何の関係があるの!冬木心と木村文俊は何年も付き合ってきたのよ。それは二人の間の感情で、北村忠というよそ者に何の関係があるの!たとえ正義感があって不公平を正したいとしても、それはあなたの出る幕じゃない!あなたは冬木心の何なの?冬木心には両親も、実の兄も弟もいるのよ。あなたは何の立場で冬木心にこんなことをするの?彼女の家族が全員死んだとでも思ってるの?!」

北村忠は唇を噛んだ。その瞬間、母親の言葉に面目を失った様子で、不機嫌に言った。「僕のことは放っておいてください!」

「羽が生えたと思ってるのね!」広橋香織は怒りで突然ソファから立ち上がった。

北村雅は慌てて妻を引き止めた。

うっかり何か大変なことをしでかさないかと心配で。

「何で私を引き止めるの、離して!」広橋香織は北村雅に怒鳴った。

「息子を殴りたいなら言ってくれよ。怒るなって、娘に悪影響だろ」

広橋香織はそうだなと思った。

息子は彼女一人の子供じゃない。

突然ソファに座り直すと、北村雅に命じた。「あなたが殴ってきなさい!」

「母さん、僕は実の子じゃないんですね。くそっ!」北村忠は父親が本気で向かってくるのを見て。

さすがに親父と殴り合いはできない。

それじゃ北村忠の品格が下がる。

でも諺にもある通り、三十六計逃げるに如かず!

彼は足早に逃げ出した。