北村系の社長室。
山田康は北村忠の言葉に驚き、30秒も言葉が出なかった。
彼は目を丸くして北村忠を見つめていた。
北村忠も相手の反応を待つように、せかすことはなかった。
しばらくして。
山田康は興奮気味に言った。「本当ですか?」
「冗談ではないと言いましたよ」
「『天の堂』の制作費を出してくれるんですか?」
「ええ」北村忠は頷いた。「北村系は様々な番組を制作していますが、ドラマや映画だけは手をつけていません。以前からドラマ制作に参入したいと考えていたのですが、良い機会がなかったんです。今回、あなたは資金が必要で、私は人材が必要。これほど良い機会はありませんよ」
山田康は言葉にできないほど興奮していた。
彼は監督の方を振り向いた。
監督も興奮した表情を浮かべていた。
山田康は不安そうにまた尋ねた。「北村会長、私をからかっているんじゃないですよね?」
「私は遊び好きかもしれませんが、御社がこんなに苦しい時に冗談を言うようなことはしません。約束は必ず守ります」
「つまり、北村会長は我が社とキャストの違約金を負担し、『天の堂』の制作費も出してくれるということですか?」山田康はまだ半信半疑で、天から降ってきた幸運のような気がしていた。
「はい」北村忠は頷き、はっきりと答えた。
山田康は思わず言った。「まいったな、最近のお寺参りが効果があったみたいだ」
北村忠は少し笑った。
興奮が収まった後、山田康は突然慎重になった。「北村系でそんな決定権があるんですか?今は井上部長が全て仕切っていると聞いていますが」
「視聴率2%まで上げると豪語できるということは、それだけの力があるということです。私を信じてください」
山田康はまだ不安そうだった。
もし本当に北村忠の言う通りなら、天に感謝するしかない。しかし、あまりにも簡単に事が運びすぎて、信じられない気持ちもあった。
「安心してください」北村忠は笑いながら言った。「不安に思っても仕方ありません。今のあなたの状況で私に逆らう余裕はありますか?抵抗して傷つくよりも、素直に受け入れた方がいいでしょう」
「分かりました!」山田康は突然承諾した。「北村会長、私も長年ビジネスの世界にいますが、今回本当に助けていただけるなら、一生忘れません。今後何かお役に立てることがあれば、遠慮なく言ってください」