病室の中。
北村忠は入り口に立ち尽くしていた。
彼の胸が痛かった。
なぜなのか分からなかったが、冬木心が愛していると言った瞬間、胸が刺されるように痛んだ。
待ちすぎたからなのか、それとも...彼の人生に別の女性が入ってきたからなのか。
愛していなくても、責任はあった。
選択は難しかった。
辛かった。
体が緊張していた。
冬木心も彼をそのように見つめていた。
彼の姿を見つめていた。
彼女は北村忠が苦しんでいることを知っていた。
もし彼が残ることを選べば、道明寺華を裏切ることになる。
もし彼が去ることを選べば、彼女を裏切ることになる。
彼をこんなに苦しめたくはなかったが、北村忠が去って別の女性と結婚するなんて受け入れられなかった。
認めよう、彼女は恋愛において卑怯な手を使った。自分の悲惨な境遇を利用して、深く愛する男性を取り戻そうとした。