第460章 彼は結局、華を裏切った(2)

病室の中。

北村忠は入り口に立ち尽くしていた。

彼の胸が痛かった。

なぜなのか分からなかったが、冬木心が愛していると言った瞬間、胸が刺されるように痛んだ。

待ちすぎたからなのか、それとも...彼の人生に別の女性が入ってきたからなのか。

愛していなくても、責任はあった。

選択は難しかった。

辛かった。

体が緊張していた。

冬木心も彼をそのように見つめていた。

彼の姿を見つめていた。

彼女は北村忠が苦しんでいることを知っていた。

もし彼が残ることを選べば、道明寺華を裏切ることになる。

もし彼が去ることを選べば、彼女を裏切ることになる。

彼をこんなに苦しめたくはなかったが、北村忠が去って別の女性と結婚するなんて受け入れられなかった。

認めよう、彼女は恋愛において卑怯な手を使った。自分の悲惨な境遇を利用して、深く愛する男性を取り戻そうとした。

実際。

北村忠と道明寺華の結婚、愛のない結婚は、本当に正しいのだろうか?

彼女の瞳には今も無数の涙が溜まっていた。

まるで世界全体が静まり返ったかのように。

北村忠は答えなかった。

彼女が期待していた北村忠の答えは、一言も返ってこなかった。

二人は沈黙を保っていた。

沈黙が続いた。

北村忠は突然、彼女のベッドの側に戻ってきた。

冬木心は彼を見つめた。

北村忠が突然彼女を抱きしめるのを見つめた。

冬木心は北村忠の抱擁がとても温かいのを感じた。

彼の胸に寄り添い、彼女の涙は氾濫するかのように止まらなかった。

彼女は言った、「ごめんなさい北村忠、ごめんなさい...」

北村忠はただ彼女をより強く抱きしめた。

彼にはよく分かっていた。冬木心のような誇り高い女性がこのようなことをするのは、彼女の心の中は自分以上に苦しんでいるのかもしれない。

彼にはよく分かっていた。今この瞬間、たとえ道明寺華と結婚したとしても、彼の人生には、彼の人生にはもう今の冬木心を置き去りにすることはできない。なぜなら、こんなにも悲惨な人生を経験した冬木心を、彼と道明寺華の結婚生活の中に、常にこのような女性の存在が残り続けることになる。

結局。

どう選択すべきなのか?

華に対して責任を取るべきか、それとも白川心に対して責任を取るべきか?

なぜ、今になって冬木心は彼のことを好きだと告げたのか。