第461章 悲しくないわけじゃない、ただ全てを我慢しているだけ(3番目)

豪邸のリビングルーム。

広橋香織は完全に崩壊したかのようだった。

彼女は涙が止まらなかった。

もし道明寺華の両親が生きていたら、もし華に両親がいたら、自分の娘がこんな状態になっているのを見て、どれほど心が痛むだろうか、どれほど辛い思いをするだろうかと考えていた。

北村忠はどうしてこんなにも彼女を傷つけることができたのだろう。

道明寺華は「おじさん、おばさん」と言った。

広橋香織は泣きすぎて一言も言えなかった。

北村雅もその時心が痛んでいたが、いつも通り取り繕っていたため、冷静に見えた。

「この間の私とお虎の世話、ありがとうございました。お虎はあなたたちの孫です。時間があれば加賀さんに連れてきてもらいます。私一人でお虎を独占するつもりはありません。」

こんな状況でも、彼女はそんなことを考えていた。

彼女は「おばさん、出産の時は必ず私に教えてください。私も付き添いたいです」と言った。

なぜなら、彼女が出産した時、おばさんが付き添ってくれたから。

あの時、彼女は何も分からなかったのに、おばさんは嫌がることなく、ずっと側にいてくれた。

誰が自分に親切にしてくれたか、彼女はすべて心に刻んでいた。深く刻んでいた。

だから彼女は北村忠を恨まなかった。

北村忠の母親が彼女に母親の温もりを与え、今まで感じたことのない両親の愛情を与えてくれたと思っていた。

それだけで十分だった。

それに、北村忠は彼女に良くも悪くもなかったので、彼を恨んだり憎んだりする理由もなかった。

ちょうど良くも悪くもないから、特別に心に留めておく必要もなかった。

「華」広橋香織は華を抱きしめた。

華は背が高かったので、少し屈んで抱きしめやすくした。

「必ず自分のことを大切にしてね。」

どんなことがあっても。

必ず自分を大切にしなければならない。

必ず誰よりも幸せに生きなければならない。

必ず北村忠に影響されることなく、北村忠より百倍幸せに生きなければならない。

「分かりました」道明寺華は力強くうなずいた。

広橋香織は名残惜しそうに華を離した。

彼女を引き止めることはできない。

これからは、道明寺華には自分の人生がある。北村家に縛られるべきではない。

だから彼女は華の出発を支持した。

彼女が自分の人生を歩むことを支持した。