第476章 北村忠が酔って道明寺華の家に入る(3更)

道明寺華は北村忠から電話がかかってくるとは思っていなかったし、彼の電話に出るつもりもなかった。

彼女は虎を寝かしつけたばかりで、電話が鳴った時、誰からかも確認せず、虎の睡眠を邪魔しないように即座に電話に出た。

すると向こうから北村忠の泥酔した声が聞こえてきた。「白川心、迎えに来てくれ。酔っ払っちまった……」

彼女は電話を切ろうと思った。

でも次の瞬間、「私は冬木心じゃありません。道明寺華です」と告げた。

酔っ払っていた北村忠はその瞬間、急に正気に戻ったかのようだった。

彼は突然姿勢を正し、そのまま携帯電話を持っていた。

道明寺華は彼が聞き取れなかったのだろうと思った。やはり北村忠は酔っていたから。

彼女は繰り返して言った。「北村忠、私は冬木心じゃありません。道明寺華です。間違い電話です」

向こうはまだ何の音もしなかった。

道明寺華は、彼が聞こえたかどうかに関わらず、もう伝えたのだと思った。

彼女が電話を切ろうとした時。

「華、もう寝たの?」北村忠が突然口を開いた。

道明寺華は一瞬固まり、ゆっくりと冷たく答えた。「寝るところです」

「ああ」北村忠は短く返事をした。

道明寺華も北村忠に言うことは特になかった。

彼女はまた電話を切ろうとした。

北村忠がまた話し始めた。「華、ありがとう」

道明寺華は一瞬反応できなかった。

北村忠は言った。「メディアで言ってくれたことについて、ありがとう」

「礼は不要です」道明寺華は率直に言った。「私があの発言をしたのは、私たちの関係を完全に切り離すためだけです。当時の私が間違っていたことは間違っていたのです。今では皆、当時私があなたを強要したことを知っているので、もうあなたに道徳的な非難をすることもないでしょう。あなたも外部から誤解されることもない。今すべてを公にしたことで、私たちの間の件はこれで終わりです」

つまり、彼女にはもう彼に償えることは何もないということだ。

彼女は本当に最善を尽くした。

北村忠は携帯電話を持ったまま、何も言えなかった。

とても辛いのかもしれない。

なぜこんなに辛いのかわからない。

道明寺華は北村忠が何を考えているのか、今どんな気持ちなのかわからなかった。

彼女は北村忠が突然また言うのを聞いた。「華、僕は結婚するんだ」