第491章 あなたの金は冬木心にあげて、私は1銭も要らない(その1)

北村忠は動画を見ながら、本当に怒り爆発しそうだった。

この男どもを殺してやりたい!

運転手は北村忠の今の感情状態が分からず、車を路肩に停め、恭しく言った。「社長、薬局に着きました。」

北村忠はまだ怒りに震えていた。

我慢に我慢を重ねて、怒りのままに動画を閉じた。

運転手は北村忠が何の反応も示さないのを見ていた。

確かに乗車時、社長は薬局を見つけたら止まるように言っていたはずだ。

運転手は少し困惑した。

もしかして、聞き間違えたのだろうか。

発車するか迷っていた瞬間、社長が突然ドアを開けるのが見えた。

北村忠はドアを開けたものの、すぐには薬局に入らず、タバコを一本取り出して吸い始めた。

今の心の動揺を抑えるのは本当に難しいと感じていた。

彼は激しくタバコを一本吸い込んだ。

そして電話を取り出して掛けた。「加賀玲奈。」

「社長。」向こうは泣きそうな声だった。

もう帰宅していたのに電話が来るなんて、ゆっくり美容睡眠を取ることもできないのか、毎日こんな残業を命じられて、もう限界だと思った。

「明日、銀行で500万円振り込んでくれ。後でアカウントを送る。」

「はい。」向こうはすぐに承諾した。

まだ明日のことで良かった。

北村忠は長い間探して、やっと以前道明寺華のライブ配信用に開設した銀行口座を見つけ、口座番号を加賀玲奈に送った。

そうして長い時間が経ち、北村忠はようやく少し落ち着きを取り戻した。

彼は薬局に向かって歩き出した。

そう、コンドームを買いに来たのだ。

冬木心の言う通りだ。これだけ同棲しているのに、まだソファで寝ているなんておかしな話だ!

実際、彼は本当に冬木心の気持ちを考えていた。彼女が経験したことを乗り越えられないかもしれないと思い、強要しないようにしていた。

とはいえ、本当に不思議だった。冬木心と同室になることを我慢できているなんて。心の奥底では、とても期待していたはずなのに。

この瞬間、どんな気持ちなのか言い表せなかった。

しかし冬木心が切り出した以上、男として、こういう事で受け身になるべきではない。

24時間営業の薬局の中で。

北村忠は適当に一箱選んだ。