第511章 年上の方が、人を大切にできる(3)

北村邸。

北村忠は冬木心を連れて現れ、瞬時にホールにいる他の人々の注目を集めた。

広橋香織はその時、虎と楽しく遊んでいた。

今や彼女は大きなお腹で、普段より二回りも太っており、歩くのも大変そうだったが、虎と遊ぶ時は元気いっぱいだった。

ホールに異様な雰囲気を感じ、振り向いた。

北村忠を見た瞬間、怒りで胸が詰まりそうになった。

冬木心を見た瞬間、気が遠くなりそうになった。

今、華と再会しているところなのに、気が利かないのか。

北村忠が冬木心を連れてくるなんて、誰の目にも障るわ。

北村忠はその時、母親の視線を感じ取り、次の瞬間には冬木心の手を引いて逃げ出そうとした。

しかし、冬木心は意外にも落ち着いた様子で北村忠の手を引き、中に入っていった。

広橋香織は冬木心を見つめた。

冬木心も広橋香織を見つめ返した。

次の瞬間、冬木心は優雅に微笑んで、「おばさま」と呼びかけた。

広橋香織も教養のある人間だったので、冬木心が先に声をかけてきた以上、喉まで出かかった怒りを飲み込んだ。

広橋香織は返事をして、「今日は珍しいお客様ね」と言った。

「ずっとおばさまにご挨拶に伺いたかったのですが、最近いろいろありまして。でも、もう全て過去のことです」

「過去のことなら、そのまま二人で仲良く暮らせばいいじゃない。わざわざ私に報告に来る必要はないわ」広橋香織は素っ気なく言った。

「それは違います。おばさまは北村忠のお母様で、これからは私の母でもあるのですから……」

「私があなたの母親になるのは、結婚してからの話でしょう」広橋香織は言い返した。

冬木心はその時も広橋香織に対して怒りを見せることなく、「とにかく、おばさまと円満な関係を築きたいと思っています」と言った。

「あなたが北村忠と暮らすのに、私との関係なんて全く重要じゃないわ。それに、私は既に北村忠を家から追い出したのだから、あなたと私の関係なんてもっと関係ないでしょう」

「北村忠が家を追い出されたのは私のせいですから、私にも大きな責任があります。おばさまが今は私のことをお気に召さないのはわかっていますが、構いません。私は努力しておばさまに気に入っていただきますから」

「……」冬木心はいつからこんなに手強くなったのか。