広橋香織が気づいているかどうかはわからない。
北村忠も気づいていた。
どんな男も、このように女性に付き添うことはないだろう。本当に好意がある場合を除いて。
道明寺華とJoeは虎が寝てしまったので、先に北村邸を後にした。
みんなが二人の後ろ姿を見つめていた。
最初は穏やかだった広橋香織は、道明寺華が去った後、急に表情を曇らせた。「もう遅いから、そろそろ帰った方がいいわ。私は疲れたから休みたいの」
北村忠は母親に本当に呆れていた。
冬木心は今夜、誰に対しても特別に寛容だった。「はい、これからは忠とよく来るようにします」
「それはその時になってからね」広橋香織は半ば拒否しながら、この時も注意を怠らなかった。「もし本当に来るなら、事前に電話してちょうだい。都合が悪い時に来られても困るわ。今日みたいに」
「はい」冬木心は頷いた。
広橋香織は冬木心が一体何を飲んで性格が変わったのかわからなかったが、北村忠と冬木心の仲が良ければいいと考えていた。仲が良ければ道明寺華の恋愛に影響が出ないだろうと。だから冬木心に対してもあえて難しい態度は取らなかった。「遅いわ、早く帰って休みなさい」
そう言い残して、北村雅と一緒に階段を上がっていった。
冬木心は北村雅と広橋香織の後ろ姿を見て、思わず笑みを浮かべた。「お母さん、本当に私のことが嫌いなのね」
「まだ始まったばかりだよ。これからよくなるさ」北村忠は慰めた。
「わかってるわ。でも少し寂しいの。でも大丈夫、あなたと一緒にいる以上、私はあなたの家族を受け入れるわ」
「心、君の変化には本当に驚かされるよ」北村忠は心から言った。
「それはあなたが私にとても良くしてくれるからよ」
北村忠は口元に笑みを浮かべた。
これでいいと思った。
冬木心と穏やかに過ごせれば、たとえ以前ほどの感情がなくても、二人でこうして暮らしていける。
彼は冬木心に多くの借りがある。一生をかけて返していこうと思う。
冬木心は自ら北村忠の胸に寄り添った。
北村忠は冬木心をしっかりと抱きしめた。
二人はとても親密そうに見えた。
道明寺華はなぜか北村忠と冬木心が親密にしている場面に出くわしてしまう。
偶然なのか、それとも人目のないところでは、二人はいつもこんなに親密なのか、わからなかった。