第535章 愛しすぎて、憎めない(3更)

冬木心は少し気まずくなった。

広橋香織は人付き合いの上手な人で、話し方も巧みだった。

しかし、この瞬間の突然の率直さに冬木心は言葉に詰まってしまった。

広橋香織は冬木心に余地を与えるつもりもなく、突然リビングのソファから立ち上がり、「加賀さん、虎を二階に連れて来てください。私が一緒に遊んであげます」と言った。

「はい、奥様」

そう言って加賀さんは虎を抱いて広橋香織について行った。

広橋香織はソファに座っている北村雅を見て、「何を座っているの?私を支えに来ないの?」と言った。

「……」北村雅は手に持っていた果物を置き、広橋香織について二階へ上がった。

冬木心は彼らの去っていく後ろ姿をただ見つめていた。

彼女は皮肉っぽく笑って、「あなたの家族の私に対する態度は、本当に隠すことなく露骨ですね」と言った。

北村忠は何も言わなかった。

「私の善意が全て、あなたの家族に悪意を持って曲解されているように感じることがあります。私はこの家では口を開いてはいけないのでしょうか。私が先ほど言ったことのどこが間違っていたのですか?最初、私はどのように注意したでしょうか。虎が道明寺華のキャリアに影響を与えると言ったはずです。そしてあなたはどう答えたのですか?今、道明寺華が自分のキャリアのために自ら虎をあなたたちに預けに来たら、あなたたちは彼女が偉大で、私が卑劣だと思うのですか?」

「心、誰もそんなことは言っていない。ただ、虎のことに関しては、君は関わらない方がいいと思う」と北村忠は注意した。

「なぜですか?私が虎の母親ではないから、私が関係のない人間だから、基本的な発言権さえないということですか?北村忠、あなたは本当に私に優しいですね。これがあなたの言う、全てを捧げて私に尽くすということなのですね」

「私が君に尽くすことは、必ずしも他人を踏み台にする必要はない。私は心から君に尽くしているんだ」

「私には本当に理解できません」冬木心もソファから立ち上がった。「これからはこの家にあまり来ないようにしようと思います。私にはあなたの家族に溶け込むことなんてできないし、両親の好感を得ることもできない。彼らの心の中で、私はただの部外者、侵入者なのです。私のすることは全て自業自得なのでしょう?」

北村忠は説明する気にもならなかった。