冬木心は少し気まずくなった。
広橋香織は人付き合いの上手な人で、話し方も巧みだった。
しかし、この瞬間の突然の率直さに冬木心は言葉に詰まってしまった。
広橋香織は冬木心に余地を与えるつもりもなく、突然リビングのソファから立ち上がり、「加賀さん、虎を二階に連れて来てください。私が一緒に遊んであげます」と言った。
「はい、奥様」
そう言って加賀さんは虎を抱いて広橋香織について行った。
広橋香織はソファに座っている北村雅を見て、「何を座っているの?私を支えに来ないの?」と言った。
「……」北村雅は手に持っていた果物を置き、広橋香織について二階へ上がった。
冬木心は彼らの去っていく後ろ姿をただ見つめていた。
彼女は皮肉っぽく笑って、「あなたの家族の私に対する態度は、本当に隠すことなく露骨ですね」と言った。