「弁護士契約を結びましょうか」北村忠は道明寺華に尋ねた。
今は本当に道明寺華に信じてもらえないことが怖かった。
今は本当に道明寺華に嫌われることが怖かった。
たとえ、たとえもう可能性がなくても、せめて彼女の心の中にこんな悪い印象を残したくなかった。
道明寺華は少し躊躇した。
彼女は「いいわ」と言った。
「いいわ」と言った瞬間、明らかに彼を信じていなかった。
彼も心の中の感情を言い表せなかった。彼は「じゃあ明日の朝一番で弁護士に契約書を作成してもらいます」と言った。
「うん」
「じゃあ、行きます」
「うん」
北村忠は背を向けて去っていった。
様々な苦しみを抑えながら、道明寺華の病室を出た。
出る瞬間に何かを思い出した。
彼は振り返った。
振り返ると、Joeが道明寺華を抱きしめ、恋人同士のように優しく抱きしめているのが見えた。