北村忠の病室の中。
北村忠は目を閉じる勇気もなく、ベッドに横たわったまま、こっそりと道明寺華を見つめ続けていた。彼女がソファーで目を閉じて眠っている様子を。
今はもう夜11時から12時くらいだろう。
病室の灯りは暗くなっていた。
世界中が静まり返ったかのようだった。
北村忠は何だか現実味がないような気がした。
彼のことをこんなに嫌っていた道明寺華が、どうしてこうも素直に残ってくれて、しかも彼のすぐ近くに横たわっているのだろう。
もう眠りたくなかった。
本当に。
一秒たりとも眠りたくなかった。
布団に潜り込んで、目だけを出して、ソファーで眠っているように見える道明寺華を見つめていた。
そうやって見つめていると……
「寝ないの?」道明寺華が突然口を開いた。
目は開けていなかったが、彼が寝ていないことを知っていた。