第569章 冬木空と清水紗佳の過去の秘密(3番目)

総督府。

清水紗佳は君島楓に遺書を書き直させた。

三通の遺書が統領の前に置かれた。

清水紗佳は「署名して!」と言った。

統領は冷笑して「殺されても署名はしない!」

「構いません」清水紗佳は笑った。「あなたがそうすると分かっていました。楓、筆跡模倣師を連れてきなさい」

統領は信じられない様子で清水紗佳を見つめた。

しばらくすると、中年の男が震えながら入ってきた。

「統領の名前を書きなさい」

「奥様……」

「死にたくなければ!」

男は仕方なくペンを取り、遺書に統領の名前を書いた。

まるで本物のように、一般人には見分けがつかないほどだった。

署名が終わった。

清水紗佳は目配せをした。

君島楓は人に連れ出すように指示した。

連れ出されるや否や、銃声が一発鳴り響いた。

何が起きたかは想像に難くなかった。

鈴木知得留は驚いて、ドアの外を見た。

統領は激怒して「清水紗佳、お前は冷血な女だ。いつか天罰が下るぞ!」

「統領はそんなことを心配する必要はありません!」清水紗佳は冷笑して「楓、あなたの父親に拇印を押させなさい!」

「はい、母上」

そう言って、君島楓は統領に近づいた。

統領は血走った目で息子を見つめ「君島楓、お前は自分が何をしているか分かっているのか?!」

「父上、勝者が王で敗者が賊です。最初から母上と争うべきではありませんでした」君島楓は冷たく言った。

その瞬間。

彼は父親の手を引っ張った。

統領は抵抗したが、数人がかりで押さえつけられてはどうにもならなかった。

君島楓は統領の親指を拘束し、印肉を押し、そして遺書に手形を押した。

押印が終わると。

君島楓はその遺書を清水紗佳に渡した。

清水紗佳は一瞥した。

満足げに笑って、統領の方を向いて言った。「あなたは安心して逝けますよ」

「清水紗佳、私を殺すつもりか……」

「統領が重病で突然倒れ、救命措置の甲斐なく他界、国民哀悼」清水紗佳は大声で宣言した。

「清水紗佳……」統領は血走った目で、険しい表情を浮かべた。

清水紗佳は統領の感情など一切気にせず、手で合図を送った。

彼女の部下は命令を受け、統領に近づき、鼻を押さえ、力を込めて……

「奥様、父上に何をしているのですか?」

ドアの外から、突然聞き覚えのある男性の声が聞こえた。