総督府。
清水紗佳は君島楓に遺書を書き直させた。
三通の遺書が統領の前に置かれた。
清水紗佳は「署名して!」と言った。
統領は冷笑して「殺されても署名はしない!」
「構いません」清水紗佳は笑った。「あなたがそうすると分かっていました。楓、筆跡模倣師を連れてきなさい」
統領は信じられない様子で清水紗佳を見つめた。
しばらくすると、中年の男が震えながら入ってきた。
「統領の名前を書きなさい」
「奥様……」
「死にたくなければ!」
男は仕方なくペンを取り、遺書に統領の名前を書いた。
まるで本物のように、一般人には見分けがつかないほどだった。
署名が終わった。
清水紗佳は目配せをした。
君島楓は人に連れ出すように指示した。
連れ出されるや否や、銃声が一発鳴り響いた。
何が起きたかは想像に難くなかった。