番外017 あの夜、あなたが私を痛めつけたことを知っていますか

翌日の早朝。

村上紀文は目を開けた。

斎藤咲子はまだ眠っていた。

彼女は寝ている時とても静かだった。

暴れることもなく、ただ丸くなって、彼の腕の中に寄り添っていた。

彼はそのまま彼女を見つめていた。

彼女の穏やかな寝顔を見つめていた。

彼は実際、過去の多くのことを思い出していた。

かつての、あの素晴らしい斎藤咲子、かつての彼のそばにいて、彼を見るとすぐに甘く微笑んでいた斎藤咲子。

思い出すたびに胸が痛んだ。

胸が痛むとき、彼は自分に言い聞かせた、もう斎藤咲子に近づくべきではないと、自分にはその資格がないのだと。

しかし今この瞬間。

この瞬間、彼はまた彼女とこんなに近い距離で一緒にいた。

「起きたなら朝ごはん作ってよ」斎藤咲子が突然口を開いた。

目を開けることなく、少しの物音でも彼女を目覚めさせるようだった。