村上紀文は今回深入りしなかった。
蜻蛉の水面をかすめるように、彼女を放した。
斎藤咲子は村上紀文を睨みつけた。
村上紀文は非常に自然な様子で自分の器の海老粥を食べていた。
斎藤咲子は我慢して、村上紀文と争うまいとした。
彼女は俯いて、自分の粥を食べた。
食べ終わった後。
村上紀文は斎藤咲子をソファまで抱きかかえ、自分は食器を洗いに行った。
キッチンを片付けた後、村上紀文は先ほど外から買ってきたものを斎藤咲子の前に持ってきて、「携帯電話だ」と言った。
斎藤咲子は村上紀文を横目で見た。
昨夜彼に壊された携帯電話のことを思い出し、今でも腹が立っていた。
村上紀文は斎藤咲子の壊れた携帯電話を取り、SIMカードを取り出して新しい携帯電話に入れ、斎藤咲子に渡した。「古い携帯に何かバックアップが必要な重要なファイルはあった?」