番外046 母子関係の緩和(一更)

渡辺菖蒲は病院に一週間以上入院していた。

村上紀文は彼女の退院に付き添った。

この間、村上紀文はずっと渡辺菖蒲に付き添い、柳田茜もほとんど常にいた。

村上紀文と渡辺菖蒲の間にはまだ隔たりがあり、二人が話す時間は多くなかった。柳田茜は彼らの間で潤滑油の役割を果たしていた。

今日は退院日だ。

渡辺菖蒲の気分はずいぶん良くなっていた。

村上紀文は渡辺菖蒲の荷物をまとめ、退院した。

村上紀文は一台の乗用車を買った。

高価なものではなく、ただの足代わりの車だ。

彼は渡辺菖蒲と柳田茜を乗せて病院を後にした。

渡辺菖蒲と柳田茜は二人とも後部座席に座っていた。

渡辺菖蒲は窓の外の景色を見ながら、思わず言った。「久しぶりに外の街並みを見たわ。人は病気になって初めて、生きていることのありがたさがわかるものね。」

村上紀文はバックミラー越しに後ろを見て、後部座席の渡辺菖蒲の顔色はあまり良くないものの、精神状態は悪くないことを確認した。

彼は唇を引き締め、何も言わなかった。

柳田茜はすぐに言った。「おばさまは長生きされますよ。」

渡辺菖蒲は微笑んで、「あなたはいつも上手に話すわね。」

「本当のことを言っているんです。」柳田茜は親しげに言った。「おばさま、ゆっくり休養してください。そのうち私がおばさまと一緒に買い物に行きましょう。」

「あなたが言ったのよ。ちょうど服が足りないから、何着か買いたいと思っていたの。」

「おばさまの手術の傷が痛くなくなったら、私がおばさまと外出します。」

「いいわ。」渡辺菖蒲は急いで頷いた。

村上紀文は彼女たちの会話をただ聞いているだけで、一言も発しなかった。

車はゆっくりと街を走っていた。

柳田茜は外の景色を見て、急いで言った。「村上紀文、私を通りの入り口で降ろしてくれればいいわ。中に入って行くから、中は方向転換しにくいでしょう。」

「うん。」

「あなたは帰るの?」渡辺菖蒲が尋ねた。

「はい。おばさまも退院されましたし。」柳田茜が答えた。

「それはダメよ。」渡辺菖蒲は柳田茜の腕を掴んだ。「それはダメ、私が退院したとたんにあなたが付き添わないなんて、私はもうあなたがそばにいることに慣れてしまったのよ。」

「おばさま……」

「彼女にも用事があるんだ。」村上紀文が口を挟んだ。