「もしもし、村上紀文、私、結婚するんだ」北村忠は興奮した様子だった。
村上紀文は口元に笑みを浮かべた。「華が君と結婚してくれるんだね」
「兄貴の魅力は大きいんだよ」
「そんなに魅力があるのになぜ何年も追いかけることになったんだ」
「ちゃんと話せないのか」北村忠は不機嫌そうだった。
「いつなんだ?」
「来月の15日だよ。電子招待状を後で送るから、必ず来てくれよ」
「わかった」
「その時は一人で来ないでくれよ」北村忠は突然注意した。
「なぜ?」
「斎藤咲子に彼氏ができたって聞いたんだ。お前が気まずくなるといけないから」
村上紀文はただ少し笑っただけだった。
彼はほぼ半日、斎藤咲子の名前を聞いていなかった。
彼は言った、「わかった」
「そんなにあっさりと、本当に誰かできたのか?」
「その時になればわかるさ」
「謎めかしてるな?」北村忠は不機嫌そうだった。
「うん」村上紀文は正直に答えた。
「まあいいや、その時に君の彼女がどれだけ美しいか見せてもらおう。斎藤咲子に負けないようにな。あの女、お前にあまりにも冷たかったから、彼女を後悔させるべきだよ」
彼にはそんなくだらないことをする気はなかった。
彼は言った、「他に用がなければ電話を切るよ」
「やっぱり咲子の話になると避けるな。まだ彼女のことを忘れられないのか?」
「そんなことはない、ただ他にも用事があるんだ」
「わかったわかった、他の人たちにも知らせてくるよ」
そう言って、北村忠は電話を切った。
村上紀文は電話を置き、時間を確認してから再び電話をかけた。
相手はすぐに出た、「紀文」
「何時に仕事終わる?」
「6時よ」
「迎えに行くよ」
「いいわ、自分で車で帰るから」
「今夜は外で食事しよう」村上紀文は言った。
「今日は何か特別な日?」柳田茜は尋ねた。
「いや、ただ料理したくないだけだ」
「じゃあ帰って作るわ」
「外で食べたくないの?」
「外で食べるのはあんなに高いのに…」
「僕がおごるよ」
「そういう意味じゃないの、あなたも稼ぐのは大変なのに…」柳田茜は思いやりを込めて言った。
「後で会社の前で迎えに行くよ」
「わかったわ」
村上紀文は電話を切った。
柳田茜と結婚して半年、付き合ってきたのも半年だった。