番外056 私は感動した、でも私はあなたを感動させることができなかった(二更)

柳田茜は目を覚ますと、すでに渡辺菖蒲の以前の家に戻っていた。

彼女は一人で菖蒲のベッドに寝て、少し空っぽな部屋を見つめていた。

部屋にはまだ菖蒲が残していったものがたくさんあり、まさに物は同じでも人は変わってしまったという状況だった。

彼女は起き上がった。

ドアを開けると、村上紀文がソファに座っていた。

眠ることなく、ただそこに座っていた。

彼女は少し心が痛んだ。

ここ数日、紀文はまた急に痩せたようで、髭も伸びていて、とても憔悴した印象を与えていた。

彼女は黙って隣に座り、「ごめんなさい、さっき寝てしまって」と言った。

村上紀文は彼女を見て、「この数日間、君は大変だったね」と言った。

「私は大丈夫よ。むしろあなたこそ、少し休んだら?おばさまが亡くなってから...あなたは全然寝ていないでしょう。体が持たないわ」

村上紀文は答えなかった。

彼は言った、「少しお粥を作ったから、お腹が空いたら食べてください。私は用事があって少し出かけなければならない」

「村上紀文」柳田茜は彼を引き止めた。

村上紀文は彼女を見つめた。

柳田茜は言った、「これはおばさまの病室で見つけたメモです。あの時あなたは気づかなかったけど、私がおばさまの病室を片付けているときに見つけたの」

村上紀文はそのメモ用紙を受け取った。

確かにそれは渡辺菖蒲の筆跡だった。

彼女はこう書いていた、「紀文、母はこの一生あまり幸せではなかった。唯一自分が生きる支えになっていたのは、恨みの他にはあなただけだった。でも今、末期がんと診断され、残された日々も少ない。私はもう耐えられない。こんなに強気な私が、このような病気にかかり、手の施しようがないことを受け入れられない。私は自分の方法でこの世を去ることを選ぶ。

紀文、母はあなたがとても悲しむだろうことを知っているけれど、これが自分にとって最善の方法だと思う。

悲しまないで。

最後に、死ぬ前に、母はあなたに約束してほしい。斎藤咲子を諦めて、柳田茜を大切にしてほしい。

九泉の下で、母もあなたのお父さんと安心して再会できるでしょう。

母より:渡辺菖蒲 絶筆」

村上紀文はただそれを見つめていた。

ただメモの一字一句を見つめていた。

目の前がぼやけた。