番外079 妊婦検診(一更)

斎藤咲子はやはり村上紀文の車に乗っていた。

斎藤咲子は一言も発せず、村上紀文も話さなかったが、村上紀文の機嫌が良いことは明らかだった。

彼は車を斎藤咲子のマンションの前に停めた。

斎藤咲子は車から降りた。

村上紀文も続いて車から降りた。

斎藤咲子は足を止め、「家に着いたから、もう帰っていいわ」と言った。

「玄関まで送るよ」

「村上紀文」

「君の妊娠期間全てに寄り添えなかったことを残念に思っている。せめて出産間近のこの時期に、父親としての務めを果たしたいんだ」

斎藤咲子は歯を食いしばった。

彼女は我慢した。

二人はマンションの中に入った。

門番のおじさんは彼らを見て、すぐに笑顔で迎えに来た。「村上さん、斎藤さん、ついに仲直りしたんですね」

村上紀文は口元に軽い笑みを浮かべ、軽く頷いた。

斎藤咲子は言った。「彼はこのマンションの住人じゃないわ。今後は入れないでください」

「若い者は冗談を言い合うのが好きですね」門番のおじさんは素朴に笑った。

村上紀文は隣で全く隠そうとせずに声を出して笑った。

斎藤咲子は村上紀文を横目で見て、中に入った。

玄関に着いた。

斎藤咲子が村上紀文がまた厚かましくも中に入ってくると思った瞬間、村上紀文は足を止め、パソコンを斎藤咲子に渡した。「無理しないで。何かあったら電話してくれ」

斎藤咲子は彼を見つめた。

村上紀文はドアの前に立ち、彼女に向かって口元を緩めて微笑んだ。

斎藤咲子は勢いよくドアを閉めた。

村上紀文はドアを見つめ、ゆっくりと斎藤咲子の家を離れた。

ほどほどに。

全てはほどほどにしなければならない。

斎藤咲子は部屋に戻り、心の中に何とも言えない重圧を感じた。重圧を感じながらも発散する場所が見つからず、彼女は自分を落ち着かせようとした。

しばらくして、やっと電話を取り鈴木隼人に電話をかけた。「柳田村の方はどうなった?」

「調査中だ。今、警察が村の住民に状況を聞いているが、大きな進展はない。ただ、私たちは柳田剛に問題があると疑っている。今、柳田剛の財務状況を調査させているが、時間がかかるかもしれない」

「進展があったら教えて」

「わかった」鈴木隼人は頷いた。「そうだ、昨日私たちを殴った連中は、今、刑事拘留されている」

「うん」

「今、体調はどう?」