宿敵

私は時折エースの方向を盗み見ながら、黙って食事をしていた。もし彼が私の考えを読むことができたなら、彼が私をどれほど幸せにしてくれているかわかるはずなのに。

彼への感謝の気持ちを言葉で表すのは難しい。

私たちは一晩中、同じ部屋で二人きりで過ごすことになる...。これは、急な予告にもかかわらず準備してくれた予期せぬデートに感謝を伝える絶好の機会になるはず。

そして二人きりになったら...もちろん私の秘密の計画を実行するつもり。彼が私の願いを断らないことを願うばかり。でも今は、今夜に向けて必要な勇気を集めなければ。結局のところ、エース・カーター・グレイソンを誘惑するのは簡単な任務ではないのだから。

待ち望んでいた夜がついに来た。今、私は興奮と恐れの間で引き裂かれている。ただ、彼が私の申し出をすぐに拒否しないことを祈るばかり。それは気まずいことになるだろう。尋ねてみなければ答えはわからない。

エースは食事をしながら自分の考えに没頭しているようだ。会話を始めるべきだとは思うが、何を言えばいいのかわからないので、黙っていることにした。

沈黙が流れた。でも何故か全く気まずくは感じず、むしろ心地よかった。会話は交わさなかったものの、このような親密なデートを過ごせる最後のチャンスかもしれないと思いながら、二人とも穏やかに落ち着いてその瞬間を味わっていた。

メインコースを終えると、ウェイターがテーブルを片付けに来た。ウェイターは配膳カートの上からデザートを丸テーブルに移した。配置を終えると、彼は一礼してカートを引いてドアの方へ向かった。

テーブルに並べられたデザートの数々に、私は甘いものが欲しくなった。ティラミス、チョコレートフォンダン、ブルーベリーチーズケーキ、キャラメルグレーズのシュークリーム、チョコレートムースなど、選べるデザートが豊富にある。私の大好きなデザートが全て目の前にあった。

健康を気にせずたくさん食べられる。今日は正式な「チートデー」なので、一日だけ好きなだけ食べられる。健康的な食事を真面目に続けた自分へのご褒美だ。

これは月に一度しかない機会だから、この瞬間を存分に楽しまなければ。

「リクエストしたデザート、気に入ってくれたかな」

気に入った?それは控えめな表現すぎる。大好きという言葉の方が、私の喜びを表現するのにふさわしい。