彼女は彼を愛している
彼が知ることのない
ほどに。
彼は彼女を愛している
彼が見せることのない
ほどに。
***
私は心残りながらフェニックスを見送った。彼女は振り返ることなくカウンターへと向かった。私は携帯電話に視線を戻し、私たちの写真を見つめながら、大きな笑みを浮かべた。
「神様、彼女は本当に美しい」と私は思い、深く息を吸い込んだ。私の注意は彼女の柔らかく天使のような顔に完全に釘付けになった。背中に翼があれば、まさに天国の神々しい存在そのものだった。
私たちの写真を携帯の壁紙に設定することに成功し、その結果に満足した。今や、彼女の写真が入った私の携帯は完璧だ。
私の視線は素早く彼女の細い背中に移り、カウンターに向かって歩く彼女がゆったりとしたTシャツを着こなしている様子と、一歩一歩魅惑的に揺れる腰に注目した。彼女は意図的にそうしているわけではない。私が密かに見ていることにも気付いていない。
私の視線は下へと這い、彼女の滑らかな磁器のような脚で止まった。その形の整った長い脚は彼女の最高の魅力だった。野心的な女性なら誰でも、そんな脚を手に入れるためなら人を殺すだろう。
彼女を賞賛している最中、私は突然、自分だけが彼女を見つめているわけではないことに気付いた。そしてそれが気に入らなかった。彼女は私のもの、私だけのものなのだ。
私は長い足で素早く彼女の後を追った。眉間にしわが寄る。彼女はカウンターで立ち止まった。店員が近づいて注文を聞いた。
私は彼女の背後に立ち、自分の体で彼女の細い体を覆い隠した。そうすることで、先ほどまで静かに彼女を見つめていた十数個の視線を遮断した。
男が不満げにうめく声を聞いた時、私は思わず笑いを噴き出しそうになった。
「エース?」
彼女は輝く目を大きく見開いて、横目で私を見た。
「なに?」
「ブラックフォレストケーキにしない?アイスクリームケーキも良いけど、帰り道で溶けちゃうと思うの」
「ブラックフォレストケーキで良いよ、フェニックス。エリサとマダム・ステラも喜ぶだろう」
彼女は私の息を奪うような甘い笑顔を見せた。彼女は自分の笑顔が私にどれほどの影響を与えているか気付かないまま、カウンターに向き直った。今でも私は震えている。