ルーカス・ニコラス 1

ルーカス・ニコラス・セント・アレクサンダーは、混雑した部屋の暗い隅に立っていた。彼の鋭い目は、ダンスフロアで汗を流して踊る人々の群れを見渡しながら、誰かを探していた。

また見失ったかと思うと、何度目かの呪いの言葉を吐いた。彼の車を尾行していることに気付かれ、フォードを見失うまで加速されてしまったのだ。

レザージャケットのポケットから携帯を取り出し、画面を見つめた。追跡装置はそこで止まっており、バーの裏手の空き地に駐車されている灰色のフォードを確認した。彼は中にいるはずだ。

車に密かに取り付けた追跡装置がなければ、彼を見つけることはできなかっただろう。もう諦めかけていたところだった。

ステージ脇のスピーカーから音楽が轟いていた。彼は思わず顔をしかめ、また呪いの言葉を吐いたが、騒音にかき消されてほとんど聞こえなかった。

携帯をポケットに戻し、群衆の中の捜索を再開した。見つけるまでに5分もかかった。バーカウンターの前のスツールに座ってビールを飲んでいるヴィンス・グレイソンを見つけた時は、喜びで飛び上がりそうになった。

ヴィンスの行動を監視することが彼のミッションだった。パートタイムエージェントとして働く調査会社から、ヴィンスの活動を監視する任務を与えられていたのだ。

数週間にわたって尾行を続けてきたが、用心深すぎる野郎は逃走の際に極めて慎重だった。数週間前の爆破事件と彼を結びつけるような欠点を見つけることができなかった。

深いため息をついた。この仕事は想像以上に難しく、実りのない苦闘の末に任務を諦めかけていた。しかし任務を放棄しようと考えるたびに、ヴィンスによって台無しにされた大切な人々のことを思い出し、血が煮えたぎった。いや!止めるわけにはいかない...エースの狡猾な兄が相応の罰を受けるまでは。

確かに、今のところ彼を追い詰めるような証拠は見つかっていないが、いずれ見つかるはずだ。ヴィンスのような邪悪な男は、いずれ本性を現すと強く信じていた。だから辛抱強く待つべきなのだ。

まるで誰かに見られているのを感じたかのように、ヴィンスは左右を見回した。彼の視線が群衆を探った。異常がないと分かると、ビールに注意を戻し、一気に飲み干して席を立った。バーカウンターのビールジョッキの下にチップを置き、急いで出口へ向かった。