危険1

ドアを閉め、長く狭い廊下を通ってフロントデスクにルームキーカードを返しに行った瞬間、私の心臓が不吉な予感とともに不規則なリズムを刻み始めた。

この不快な感覚が生じた時は、たいてい単純に追い払えば消えてしまう。しかし、今回は暗い予感を押しのけても消えず、むしろ強まり、私に迫る危険に警戒するよう告げていた。

バックパックを背負ってホテルの外に出た瞬間、誰かに見られているのを感じた。そこに立ち続けるほど、不快感は増していった。

白昼堂々と襲われることはないだろうから、今のところは安全なはずだ。

人でいっぱいのこの場所で、誰も私を傷つけようとはしないはずだ。

鷹のように鋭い目で群衆を見渡した。

警戒した視線で左右を確認した。今のところ不審な人物は見当たらないが、油断はできない。まだ迫り来る危険の予感が消えていなかった。

タクシーを待った。空港に行く必要があったからだ。待つことしばらく、私の方に向かってくるタクシーを見つけ、すぐに手を上げて止めた。ドアを開け、バックパックを後部座席に置いてから乗り込み、ドアを閉めた。

芳香剤の不快な香りが鼻を突き、めまいを感じさせた。車内に漂う空気が胃をひっくり返すような感覚を引き起こした。吐き気が襲い、床に倒れないよう前の座席をしっかりと掴んだ。

「空港までお願いします」と命じたが、自分の声が弱々しく聞こえることに気付いた。

私の言葉を聞くと、運転手は無言でエンジンをかけ、車は前進し始めた。

後部座席に深く沈み、目を固く閉じた。おそらく、少し休めば吐き気は去るだろう。一晩中起きていたのだから、具合が悪くなるのも当然だ。睡眠不足が、この突然のめまいの原因に違いない。

10分が経過し、目を開けたが、めまいは収まっていなかった。むしろ以前より悪化していた。今度は視界がぼやけ始め、周囲が霞んでいった。

私に何が起きているのか?弱々しく自問し、意識を保とうと必死に戦ったが、その努力も無駄だった。

体力が急速に低下し、手足が動かなくなった。もがこうとしたが、全身が麻痺していた。助けを求めて叫ぼうとしたが、唇からは声が出なかった。

そして突然、真実に気付いた。部屋は化学物質の煙で満たされていた。タクシー内の吐き気を催す臭いは、一時的に人を麻痺させ...意識を失わせる薬物だったのだ。