目が開いた時、最初に目に入ってきたのはぼんやりとした白い天井だった。何度か瞬きをしたが、ぼやけは消えず、仕方なく目を閉じて、視界が晴れるまで数秒待った。
くそっ、ここはどこだ?何が起きたんだ?何一つ覚えていない。床に倒れたまま目が覚めて、どうやってここに来たのかも分からない。
数分後、目を開けた。今度は朝の青空のように視界がクリアになっていた。見慣れた空色の壁、キングサイズのベッド、隅のミニバー、そして壁に掛かった女性の肖像画が、部屋を見渡す目に飛び込んできた。
これ以上何も見る必要はない。ここがグレイソン邸の自分の部屋だと分かった。
俺はここで何をしているんだ?命に関わる事態でもない限り、この地獄には二度と戻らないと誓ったはずだ。
立ち上がろうとしたが、力の入らない手足は準備ができておらず、床に倒れ戻った。体中が痺れ、頭が激しく痛んだ。冷たい固い床の上でどれくらい横たわっていたのだろう。
部屋の中の不気味な静けさは耳をつんざくようだった。そして、辺り一面に暗い雰囲気が漂っていた。ベネチアンブラインドから漏れる微かな光は、午後6時近くで日が沈み始めていることを示していた。
全ての力を振り絞って、もう一度立ち上がろうとした。今度は成功した。手が突然温かい液体に触れた。何かと思って見てみると、手の届く範囲に広がった新鮮な血の池を発見した。
その不気味な光景に背筋が凍った。手を見ると、血に浸かっていることに気付いた。しかし、最も恐ろしかったのは血ではなく、手に持っていた25センチのナイフだった。
恐怖は怪物のように大きくなった。その場に凍りついたまま、目を見開いて瞬きもせずにナイフを見つめ、魔法のように消えることを期待した。しかし、消えることはなかった。むしろ、見れば見るほど、それは現実味を帯びてきた。
ドクン!ドクン!
ドクン!ドクン!
心臓の鼓動が部屋中に響き渡るほど大きかった。
これは現実なのか、それとも悪夢なのか?どうしてこんなことに?
バランスを取り戻すまで体を押し上げ、足で立った。床に倒れている意識のない体につまずいて、バランスを崩しそうになった。
手からナイフが滑り落ち、タイル張りの床に鋭い音を立てて落ちた。
血の池の中に横たわっているのは、優雅な白いドレスを着たアンジェラだった。胸の深い傷から血が流れ出ていた。