ドアを開けた瞬間、キャサリン・グレイスが急いで部屋に入ってきた。彼女の美しい顔には、普段とは違う眉間のしわが寄っていた。ベッドに座り、ラップトップを膝の上に置いた。
彼女の表情の切迫感を見て、私は素早くドアを閉めた。長い足取りで急いで彼女の側まで行った。「キャット、何か問題でも?」と私は尋ねた。彼女の表情を見つめながら、何が彼女を悩ませているのか考えた。
返事がなかったので、私はゆっくりと彼女の隣に座った。彼女が開いたラップトップの画面を覗き込んだ。
「これを見て、フェニックス」彼女は写真の建物を指差した。「私が見ているものが見える?」彼女は突然興奮した口調で尋ねた。
私は目を細めて、彼女のラップトップの画面に集中した。
その写真は、大規模な改修が必要そうな古い二階建ての建物だった。建物の前にはいくつかの車が駐車されていた。写真には特に目立つものは何もないと私は思った。キャサリン・グレイスが私に見せたかったものが分からなかった。
「実際のところ、何を言いたいのか分からないわ」私は数分間じっくり見た後で諦めて答えた。彼女が指摘しているものが全く分からなかった。
「これはアンジェラの車よ。彼女が亡くなる前に最後に目撃された場所なの」
キャサリンの返事に私の興味が掻き立てられた。今度は私も身を乗り出して、二階建ての建物の前の駐車場に停まっている空色のフォードを見つめた。そして好奇心に駆られた視線を建物に移し、アンジェラがこの場所で何をしていたのか考えた。
セント・ジェームズ。建物に書かれていた文字だった。その言葉はどこかで聞いたことがあるような気がした。確かに以前聞いたことがあるのだが、どこで聞いたのか思い出せなかった。
画面から目を離さずに何度か瞬きをした。
「セント・ジェームズ」私は文字を声に出して読んだ。そしてついに、どこで聞いたのか思い出した!サマンサが破壊した絵画に書かれていたのだ!
私は目を見開き、眉が天井まで跳ね上がるようにしてキャサリンを見た。
「私の調査によると、セント・ジェームズは町はずれにある古い孤児院よ」キャサリンは荒廃した孤児院の外観を写した別の写真をクリックしながら説明した。「孤児院の記録を深く調べたところ、アンジェラが孤児院の運営を支援する主要なスポンサーだったことが分かったの」