第12章 彼女に資格なんてある?

好き?

彼女なんかに相応しい?

江口侑樹は薄い唇を開き、その二文字を呟くように繰り返した。黒い瞳に嘲笑の色が浮かんでいた。

その言葉を嘲笑っているのか、それとも何か別のものを嘲笑っているのか分からなかった。

江口侑樹は手にしていたグラスを床に叩きつけた。バンという音に、周囲は一瞬にして静まり返り、誰も息をするのも恐ろしい雰囲気となった。

黒田時久も驚いたが、彼のその様子を見て、さらに焦りを感じた。「侑樹さん、園田円香のような女に惑わされてはダメですよ。二年前に彼女がしたことを忘れたんですか?」

黒田時久は言いながら、すぐに横で黙っている秦野慶典の方を見た。「あなたも何か言ってよ!」

この二年間、江口侑樹がどう過ごしてきたか、兄弟として彼らはよく分かっていた。園田円香に再び彼を傷つけさせるわけにはいかなかった。

秦野慶典は黒田時久の肩を叩き、落ち着くように促した。「侑樹は分かっているさ」

黒田時久は軽蔑的な表情を浮かべた。江口侑樹は園田円香に会うと、いつも予測不能になる!

「侑樹」秦野慶典は江口侑樹にグラスを向けた。「一緒に」

今、彼に必要なのは、酔いつぶれることだった。

江口侑樹は彼と視線を合わせ、笑みを浮かべながら、再びグラスを手に取り、乾杯した。

言葉は全て酒の中にあった。

客室で。

園田円香は布団を抱きしめながらベッドから降り、床に落ちている服を拾い上げたが、服はすでにボロボロに引き裂かれており、もう着られる状態ではなかった。

彼女は歯ぎしりしながら、江口侑樹を百回呪った後、ようやく会館の内線電話をかけ、従業員に新しい服を買ってきてもらうよう頼んだ。

約三十分後、従業員が服を持ってきて、彼女は着替えた後、鏡の前で自分をチェックした。自分で口紅で描いた官能的な跡は全て消えていたが、代わりに本物の跡が付いていた。

白い肌に青紫の痣が点々とあり、見るに堪えないほどだった。

園田円香は深くため息をつき、手で顔の涙跡を拭い、散らかった髪で首筋の跡を隠してから、やっとバッグを手に取り、客室を出た。

会館の玄関を出た時、一人の女性と正面からすれ違った。

園田円香は気分が落ち込んでいたため、彼女に気付かず、目を伏せたまま前に進み、その女性とすれ違った。