第48章 誤解

見知らぬ人は嫌い……

安藤秘書はその言葉を小声で繰り返し、じっくりと考えているうちに、ふと閃いた。

この数日間、社長に文句を言われていたのは、彼の世話が悪かったからではなく……人が違っていたからだ!

江川社長が望んでいた「看護人」は自分ではなく、園田さんだったのだ!

安藤秘書は自分の鈍さに胸が詰まる思いだった。もし二日前にこのことに気付いていれば、こんなに苦労することもなかったはずだ。

プロの秘書として、彼の責務は社長の悩みを解決することだ。

社長が面子を保ちたい事なら、彼が全て引き受けることができる!

「社長、ご意向は分かりました。すぐにご満足いただける看護人をお探しします!」

そう言うと、彼は部屋を出て、携帯を取り出し、園田円香に電話をかけた。

園田円香はちょうどその時、病院で山田真澄に付き添っていた。あの日ホテルから帰ってきて以来、ずっと気分が落ち込んでおり、何をしても上の空だった。

前向きになりたくないわけではないが、憂鬱な感情が影のように付きまとい、振り払うことができなかった。

別荘にずっといると、江川おばあさんに気付かれそうで、この数日は病院に通い詰め、真澄の側で話し相手になることで、気を紛らわせていた。

海外での二年間で、彼女は傷を自分で癒す術を学んでいた。今は少し時間が必要なだけで、あと数日もすれば、江口侑樹に感情を左右されることはなくなるはずだ!

「真澄、りんご食べる?お姉ちゃんが剥いてあげるわ」

彼女は持ってきたフルーツバスケットから一番大きくて見栄えの良いものを選び、小さなナイフで皮を剥き始めた。

突然携帯の着信音が鳴り、彼女は手を止めることなく、ちらりと画面を見た。

安藤秘書からの電話だと分かると、思わず眉間にしわを寄せ、手元が狂ってりんごの皮が切れてしまった。

今は江口侑樹というクソ男も、彼に関係する人や物事も見たくなかった!

彼女はその電話を無視し、りんごの皮を剥き続けた。

電話は自動的に切れるまで鳴り続けたが、次の瞬間にまた鳴り出し、出るまで諦めない勢いだった。

山田真澄はその携帯を見て、静かに言った。「お姉ちゃん、電話に出ないの?」

彼は着信表示をもう一度見て、「この安藤秘書って…義兄さんの秘書でしょ?きっと義兄さんが用事があるんだよ。とりあえず出た方がいいんじゃない?」