第52章 刺激を求めて

園田円香は気づいた。目の前のこの男をどれだけ無視しようとしても、彼は必ず彼女の怒りのツボを的確に突いてくるのだと。

今では逆に、江口侑樹が彼女の誕生日を覚えているどころか、はっきりと記憶しているのは、彼女を嫌っているからこそ、わざと他の女を連れてきて彼女を不快にさせようとしているのだと思えてきた!

切り分けたステーキを口に入れ、力強く噛みしめ、飲み込んでから顔を上げ、作り笑いを浮かべて返した。「江川社長は、もうそんなにお元気そうですが、まだ療養が必要なんですか?」

彼女には足が不自由な様子など、まったく見受けられなかった。

江口侑樹は眉を上げ、「見せてあげようか?」

「結構です」園田円香の唇の端がさらに上がった。「江川社長のご容態については、気にかけてくれる人がいるでしょう。私はあなたのことに興味はありません!」

江口侑樹の瞳が沈み、氷のように冷たい眼差しになった。

園田円香は少しも怯むことなく彼の視線を受け止め、遠慮なく追い払うように言った。「江川社長、お話は終わりましたよね。ご自由にどうぞ、私は食事を続けますので」

男の視線は彼女の言葉とともにテーブルの上の二人分のステーキと二杯のワインに落ち、再び唇の端を上げた。

彼は自分のために用意されたと思っているのだろうか?

ふん!

園田円香はすぐさま手を伸ばし、彼の前に置かれたステーキを取り上げ、直接自分の皿に移し、もう一杯のワインも手に取り、頭を後ろに傾け、一気に飲み干した。

行動で示してやる、勘違いするなと!

吐き気がしても、彼には一口も与えないわ!

女の挑発的な眼差しを見つめ、江口侑樹の瞳の奥に暗い光が湧き上がったが、依然として感情を読み取ることはできず、最後には立ち上がってレストランを出て行った。

吉田恵理那は別荘を大まかに見学した後、江口侑樹の前に戻り、愛らしい笑顔を浮かべながら、手を上げて耳元の髪をかき上げ、優しく尋ねた。「江川社長、私はどのお部屋に泊まればいいですか?」

江口侑樹は目の端でレストランの方を一瞥し、視線を戻すと、いつもの冷淡な声で答えた。「好きな部屋を選んでください」

つまり、好きな部屋に住んでいいということね、吉田恵理那の心は抑えきれない高鳴りと興奮で一杯だった。