黒い車が玄関前の芝生にゆっくりと停まり、後部ドアが開くと、男の長い脚が最初に地面に着いた。
園田円香の視線がそれに沿って上がり、江口侑樹の長身で凛とした姿、この世のものとは思えないほど端正な顔立ちを見て、彼女の心臓は抑えきれないほど早く鼓動した。
彼はいつものように白いシャツとスラックスという簡素な装いだったが、まるで見る者の心を癒す絵画のように、人々の視線を釘付けにし、目を離すことができなかった。
もう一方のドアが開き、別の人影が近づいてきて、園田円香の視界に入ってきた。
一人の女性、かなり美しい女性だった。大きなウェーブのかかった髪が背中に流れ、その艶やかさを引き立て、体にぴったりとしたドレスが曲線美のある体つきを余すところなく見せていた。濃いめの化粧をし、唇には男を魅了する赤い口紅を塗り、しなやかに江口侑樹の傍らまで歩み寄り、彼を見つめた。
少し距離があっても、園田円香には彼女の目に宿る崇拝と恋心がはっきりと見て取れた。
園田円香の呼吸が一瞬止まった。江口侑樹が戻ってきただけでなく、女性を連れて帰ってくるなんて、思いもよらなかった。
この女性は誰なのか?あの日電話に出た、甘い声の女性なのだろうか?
つまり、江口侑樹は彼女が送ったメッセージを見て、おばあさんがここ数日いないことを知り、好き勝手しているということ?
彼女は体の両側で手を強く握りしめた。
江口侑樹と吉田秘書が一緒に近づいてきて、園田円香は逃げる間もなく、二人と向かい合うことになった。
男の視線が園田円香の顔に落ちた。この時の彼女の表情は曖昧で、どんな感情なのか読み取れなかった。
江口侑樹は何も言わず、園田円香も先に口を開かなかった。吉田秘書だけが園田円香を見て、軽く驚いた様子を見せた。
園田円香は最近話題になり、ニュースの見出しを飾っていた上、かつて江口侑樹の婚約者で、あと少しで江川家に嫁ぐところだった人物だったため、吉田秘書は当然彼女のことを知っていた。
彼女が驚いたのは、園田円香はもう江口侑樹とは何の関係もないはずなのに、この別荘は江口侑樹の私邸なのに、なぜここにいるのかということだった。
彼女は江口侑樹を見て、また園田円香を見た。江口侑樹は園田円香がここにいることを意外に思っていない様子だった。ということは...園田円香はここに住んでいるということ?