第58章 彼は喜んで受け入れる

その三文字だけで、園田円香の手は拳を握りしめた。もし彼が体で払うなどと厚かましいことを言い出したら、絶対に拳を食らわせてやる！

江口侑樹の視線は女性の小さな顔に釘付けになり、彼女が誤解したような表情を見せると、ゆっくりと続けた。「吉田秘書の代わりに、私の看護をしてもらう」

「……」園田円香は少し驚いて、「それだけ？」

江口侑樹は眉を上げ、「他に何を期待していた？それとも……体で払う方がいい？」

最後の二文字を、彼は意図的に彼女の耳元で囁くように吐き出し、吐息が彼女の耳に当たり、彼女の耳は思わず赤く染まってしまった。

園田円香は力強く彼を押しのけ、二人の距離を広げ、もごもごと反論した。「誰が、誰が体で払うなんて考えてないわよ！」

しかし彼女の赤くなった顔は、どこか後ろめたさを感じさせた。この意地悪な男は、どうして彼女の考えていることが分かるのだろう……

彼女は目を伏せ、江口侑樹の冗談めかした視線を避けた。密かに深呼吸をして気持ちを整え、断る言葉を口にしようとしたが、言葉が喉まで出かかったところで、何かを思い出したように一瞬止まった。

思い出したのは、一昨日安藤秘書から電話があり、江口侑樹の看護をして欲しいと言われたときのこと。そのとき彼女は迷わず断った。

そして昨日、江口侑樹は吉田恵理那を連れて戻ってきた。一つは彼女を試すためで、もう一つの理由は、これだったのだろうか？

彼女が看護を断ったことに不機嫌になり、このような回り道をして、彼女を従わせようとしたのか？

江口侑樹のような我が道を行く、傲慢で、些細なことにも仕返しをする性格では、自分の意に沿わないことを許せるはずがない。だから彼女のこの推測は間違いないはずだ！

子供じみている！くだらない！

園田円香は眉をひそめて少し考え込んだ後、にっこりと笑顔を見せた。彼女は顔を上げ、男性の深い瞳を見つめ返して、「江川社長のおっしゃる通りです。私があなたの看護師を追い払ったのですから、確かに代わりの者を用意すべきですね」

「こうして重要な役目を任せていただけるなんて、光栄です」

「分かりました。これからの数日間、私があなたの看護をさせていただき、しっかりとお世話させていただきます！」