第101章 傲慢な社長が可愛い夫に変身

園田円香は両手をさらに強く握りしめ、思わず乾いた唇を舐めながら、「あの……さっき真澄の体を拭いてくれた時……」と口を開いた。

突然、携帯電話が鳴り、江口侑樹は着信画面を一瞥してから、すぐに電話を取った。

園田円香の言葉は途切れた。

「電話に出る」と江口侑樹は一言残し、長い足で大股に病室を出て行った。

園田円香は少し驚いた。

昨夜から今まで、江口侑樹の携帯電話はほとんど鳴り止まず、仕事の電話が次々と入っていたが、彼はいつも彼女の前で普通に受けていて、特に避けることはなかった。

でも今回の電話は、外に出て受けなければならないものだった。

重要な会社の機密に関する電話なのか、それとも他の何かなのだろうか?

約5分後、江口侑樹はドアを開けて戻ってきた。

園田円香は急いで深呼吸をして気持ちを整え、続きを聞こうとしたが、江口侑樹がソファーの方に歩いていき、テーブルに置いてあったノートパソコンを閉じるのを見た。

これはどういうこと?彼は帰るつもり?

つまり……さっき彼が答えなかったのは、彼女が思っていたような「もう帰らない」というわけではなく、演技が終わったから、やはり帰るということ?

案の定、次の瞬間、江口侑樹はソファーの肘掛けに置いてあったスーツの上着を手に取った。

園田円香は目を伏せ、突然湧き上がってきた失望と、止めどない自嘲の念を隠した。

そうよね、何を期待していたのかしら……

その後、病室のドアが再び開き、安藤秘書が入ってきた。

安藤秘書はまず丁寧に園田円香に挨拶をした。「園田さん、こんにちは」

園田円香は呆然と頷いて、「こんにちは……」と返した。

安藤秘書はテーブルの方に歩み寄り、手際よくパソコンと書類を片付けて抱えた。

江口侑樹はスーツを着て、財布と携帯電話を手に取り、長い足で外に向かって歩き出したが、二歩ほど進んだところで、突然何かに気付いたように足を止めた。

安藤秘書は元々彼の後ろについていたが、突然の停止に気付かず、そのまま江口侑樹の背中に衝突してしまった。

彼は即座に冷や汗を流しながら、すぐさま謝罪した。「江川社長、申し訳ございません!わざとではありませんでした!どうか償わせていただく機会をください!」

園田円香も彼のこの敏感な反応に驚いた。